2007年7月28日 (第2822回)

江戸時代の少子対策-「幼年比率維持仮説」の適用-

兵庫県立大学 経済学部教授 松浦 昭

 昨年より日本は人口減少が現実のものとなった。このまま人口減少が進むと労働・消費構造に大きな変化が生じ経済の活力が失われると懸念されている。また少子化で地域から子どもの歓声が少なくなることは、寂しいことであり地域の活性化にとって憂慮すべき事態であるかもしれない。一方でエネルギーや環境問題の視点からは、これ以上の人口増加は望ましくないという考え方もある。

 過度の急激な人口減少は大きなデメリットをもたらすであろうが、穏やかなそれは低経済成長にふさわしい選択肢のひとつかもしれない。

 しかし日本が人口停滞・減少を経験するのは初めてことではない。江戸時代中期から後期にかけて全国人口はほぼ停滞していた。平均世帯規模が4~6人であったことを考えると、一世帯の子供数はそれほど多くなかった。江戸時代も現在ほどではないが少子社会であったのである。そこで村や藩は人口を維持するために苦慮することとなる。

 今回はその具体的様相を「幼年比率維持仮説」という形で紹介してみたい。