2017年11月11日 (第3219回)

扇動政治としてのポピュリズム――その支持者と問題点

立命館大学法学部 教授 村上 弘

 ポピュリズムの「本質」が論争されるが、とりあえず3つの側面からポピュリズムの定義を試みる。政治リーダーが人々に直結しようとする「構造」、政治リーダーの強烈な宣伝や攻撃という「アピール手法」、そしてかなりの人々の「支持」だ。

 第2のアピール手法は、まず、合理性を欠いた利益(行政サービス、大型公共事業、減税など)をばらまくことだが、批判されやすい。しかし21世紀の欧・米・日での主流は、「普通の人々の敵」を見つけ出し、それを叩くヒーローを演じる。敵とされるのは、既得権、既存政党、特定の制度・機関、公務員、あるいは外国人移民、特定の国や民族などであり、それさえ排除すれば問題は解決すると宣伝する。こうした攻撃性と単純化に注目するなら、ポピュリズムの訳語は、「大衆迎合」政治ではなく、(大衆)「扇動」政治がふさわしい。

 第3の支持層については、エリート政治から排除された人々という見方と、単純で攻撃的なアピールにだまされやすい人々(大衆)という見方とが分かれている。

 上記の定義のもとで、政治家発言の「ファクト・チェック」や選挙の出口調査、世論調査を利用し、ポピュリズムの特徴、支持層、問題点を実証研究できる。大阪市廃止とそのマイナスについて知らせない「大阪都」構想や、2016年アメリカ大統領選挙を例に、いくらか解説してみたい。