語学編

フランス語の学び方

1. フランス語は何処で話されているか?

フランス語はフランス語圏の地域全体で約一億人の人々が話している言語である。フランス語は「フランス共和国の言語である」(憲法第1条)ことは当然であるが、ベルギー、スイス、ルクセンブルグ、カナダに住んでいる人々のかなりの部分もフランス語を話している。

また、かつての植民地関連の歴史的状況の結果、現在フランス語が話されている地域は五大陸に及んでいる。仏領ポリネシア、ニュー・カレドニア、仏領ギアナ、仏領アンティル列島といった海外県や海外領土をフランスは保有しているのである。さらに、現在では独立国となった多くの国々、特に北アフリカやサブサハラアフリカの国々の多くは、自国語と同じくフランス語も公用語として使い続けている。

フランス語はアカデミー・フランセーズ(1635年設立)が制定した厳密な規則に従って極めて早くから近代的な形に定められ、18世紀初頭から外交語としてヨーロッパの宮廷で使用されてきた。条約類はたとえフランスに関わりのない場合でもフランス語で書かれていた。フランス語はこうした特権的地位を20世紀初頭まで、つまり英語が競合相手として台頭し始める時期まで維持してきたのである。

今日、フランス語は英語と並んで欧州連合や国際連合の公用語及び作業言語となっている。また、パリに本部を持つユネスコでもフランス語は英語と並んで作業言語となっている。

2. フランス語とは何か?

言語学的な見地からすれば、フランス語はロマン語族に属しており、ローマ帝国の西側地域で話されていた俗ラテン語から派生している。フランスの政治的、宗教的、知的中心地であるパリとその近郊で話されていた方言が中世以降優位性を持つようになり、この言葉がイギリスを征服したノルマン人によって強制された結果、イギリスではこの言葉が長らく宮廷用語として用いられ、英語の発達に深い影響を与えたのである。

フランス語は、国王の権力を国全体に及ぼす道具として、17世紀から政治的意志によって定められた。フランス革命もナポレオン帝政も基本的に中央集権的であり、この姿勢を強化するばかりであった。19世紀末になると、無償の公的義務教育が発達し、地方の言語や方言に対するフランス語の勝利が確立される。一方国外では、フランスの植民地支配体制の成立がフランス語を普及させる強力な要素となり、それらの国々が独立を成し遂げた後も、様々な部族や民族間のコミュニケーション言語として(また国際機関におけるコミュニケーション言語として)フランス語が使われ続けている例が数多く見られる。

3. 基礎フランス語の修得

上に述べた歴史的理由から、フランス語は英語の発達に決定的役割を果たしてきた。従って6年間英語を学習した後にフランス語を学ぶ日本人学生は、知らず知らずのうちに既にフランス語の潜在的知識を身につけているのである。英語の文法はフランス語の文法からさほど隔たっているわけではなく、英語の語彙の中にはフランス語の単語に直接由来するものが多数存在する。しかしながら、同じ単語であっても英語とフランス語では発音が非常に異なっており、学生はその単語をフランス語で発音する時には英語の発音を「忘れる」よう努力しなければならない。また、単語数としては限られているのでさほど重大な問題ではないが、英語とフランス語で意味が全く異なってしまった「似て非なる」単語の問題もある。

フランス語はロマン語族の他の言語と同じくラテン語の単純化された形態である。ラテン語では、あらゆる種類の単語(名詞、形容詞、代名詞、動詞、等)が語尾変化(文章の中で単語がその文法的機能に従って変化する)の対象であった。フランス語が発達する途上で名詞と形容詞の語尾変化は消滅したが、動詞の活用と代名詞の語尾変化についてはラテン語由来の複雑なシステムをフランス語は保持している。従って日本人学生はこれらの活用形や変化形を覚えるという相当な努力をしなければならない。動詞の活用は特に英語の比較的単純な活用システムとは比べものにならない複雑さである。

結論として言えることは、日本人学生は英語の知識のおかげでフランス語を学ぶに際して大きな強みを持っているということである。しかしこの幸運はまた、必要とされる努力を軽視しかねないという点で、不運とも見なさねばならない。英語は他のどの西洋語と比較しても「易しい」言語であり、同じような態度で他の西洋語を学ぼうとしてはならない。何故なら、ほとんど全ての西洋語に日本人学生の知らない或る現象が存在しており、それが英語には例外的に存在していないからである。それは性の問題である。フランス語の普通名詞には全て男性か女性かの「性」が与えられており(ドイツ語には中性もある)、「table」(テーブル)と「tableau」(黒板)という単語を覚える時には同時に、「table」は女性名詞であり「tableau」は男性名詞であることも覚えることが不可欠である。そうしないと、これらの名詞をそれにふさわしい定冠詞や不定冠詞を付けて文章の中で使うことができない。

これは私が初級の学生たちに対してよく言うことであるが、フランス語は英語にディテールを加えたようなものである。まずはこうしたディテールを一年間にわたって根気強く決意をもって学ばねばならない。そうすれば2年目の国際関係学部が提供するフランス語の専門的な授業や、他学部生と一緒に受講できる全学副専攻フランス語コミュニケーションコースを充分楽しむことができる。頑張ろう!

4. 辞書・参考書

フランス語の辞書も、初学者向けから専門家向けまで充実している。オンライン辞書、CD-ROM版、HDD格納型などはパソコン画面上で文書を作成する場合に便利である。最近は、教室でも電子辞書を使う人が大勢を占めている。迅速な検索能力という利点はあるが、紙媒体の辞書や書物も備えておきたい学生は以下のリストを参考にしてください。

  1. 1)クラウン仏和辞典、三省堂
  2. 2)プチ・ロワイヤル 仏和・和仏辞典、旺文社
  3. 3)中上級:ロワイヤル 仏和辞典、旺文社
  4. 4)実務:ローベル仏和大辞典、小学館
参考書も多数あるが英語の既習者に役立つのは
  1. 5)久松健一「英語がわかればフランス語は出来る!」駿河台出版
  2. 6)久松健一「ケータイ「万能」フランス語文法」駿河台出版
  3. 7)「新・リュミエール フランス語文法参考書」駿河台出版
  4. 8)インターネット上にはフランス語学習のためのサイトが数多くある.誕生、消滅も頻繁なので検索エンジンを使って探してみよう。
執筆者:ミッシェル・ワッセルマン
執筆日(更新日):2018年1月2日、2020年12月30日、2021年12月23日(タヤンディエー・ドゥニによる修正)