2018.08.27 TOPICS

興味・関心から多様な学びへ 自ら課題を見出し、解決策を導く力を養う3回生の小集団教育

 「知性を身に付け、境界を超え、ともに学ぶ」ことを重要視し、「専門的な素養」と「Borderを超えて主体的に学ぶ力」を身に付けることを目指す『学びの立命館モデル』。この仕組みを軸とした立命館大学の教育システムの特長のひとつに「小集団教育」があります。各学部がそれぞれの学び、回生(学年)に合わせた小集団授業をカリキュラムに配置し、学生たちは1回生から卒業まで段階的に学びを深め、研究を進めています。
 ここでは、そのひとつである3回生を対象とした総合心理学部の「専門演習Ⅰ」(髙松里江准教授)でのお話をうかがいました。

テーマを絞り、学びを深める

ゼミの様子
ゼミの様子

 総合心理学部のカリキュラムで大きな柱となっているのが、小集団で行われる各回生の演習科目です。1・2回生時の「基礎演習」「展開演習Ⅰ・Ⅱ」から3・4回生時の「専門演習(ゼミ)」を開講。丁寧かつきめ細かな小集団教育によって、専門的な学力と共に実社会で必要不可欠なプレゼンテーションおよびコミュニケーション能力、幅広い応用力、他者と協働する力などを育成します。
 主にテーマに沿った文献やデータ(統計資料)などを調べて研究発表を行うもので、大学での「自ら学ぶ」教育をさらに発展させる重要な学び(科目)となります。
 2016年4月に開設し、現在の3回生が第1期生の総合心理学部。いわゆるゼミにあたる専門演習にも、もちろん上回生はいません。アドバイスをもらえる先輩もおらず、それだけに、自ら進んで学ぶ姿勢がより重要となります。
 総合心理学部に限らず、3回生の専門演習では、4回生時の卒業論文制作に向け、1、2回生で身に付けたそれぞれの分野の専門知識(総合心理学部では心理学など)を踏まえて、自身の研究テーマを絞り込んでいくための準備を行います。これまでの学びや経験から興味関心を抱いた領域に対し、さらに知識を深めるため専門性の高い文献などを読みながら、研究の対象と方法に対する理解度を高めていきます。また、他者との共同学習によって、既存の(自分の)価値観や知識、常識、という”Border”を超える学びも経験していきます。

「学び合い」 小集団ならではの利点

髙松里江准教授
髙松里江准教授
井上純菜さん
井上純菜さん

 今回取材した髙松ゼミでは、統計的手法を用いてジェンダー・アイデンティティやセクシュアリティとジェンダー、家族やメディアによる発達的影響など、個人の生き方や社会の諸事象におけるジェンダーをめぐる問題に対して、心理学のアプローチから学んでいます。多方向からジェンダー心理学に関する理解を深めつつ、問題解決につながる主体的、実践的能力を身に付けていきます。
 「食べ物は人が生きていく上で必要なものであり、さらに『美』や『健康』にも大きく関わっており、それと心、心理学がどのように関係しているのかについて興味がありました」と、アルバイトの経験やこれまでの学びを通じ、食と美や健康に関するテーマを中間発表の研究対象に選んだ井上純菜さん。食品関係の企業への就職を考えていると言い、「統計的手法を用いたデータ分析などは将来にも役立つ」と笑顔で話します。本格的な調査・分析・発表はこれからですが、これまでのプレゼンテーションを通した吟味や議論で、「計画性や下調べの重要さはもちろん、自らの考えを正確に伝える難しさ、他の人の意見を聞くことで、そういう考え方もあるんだなということが分かり、さらにこういう資料、文献もあると仲間から教えてもらえるなど、研究を進めていく上でもとても参考になります」と、これまでの感想を口にします。
 「今後は、こうした中間発表などを進めながら、自分自身が研究したいテーマをより明確化し、具体的な研究のかたちに落とし込んでいくための作業を行います。そのためには、まず、関連論文を熟読して、批判的に検討する姿勢が重要となります。発表やクラス内での議論を通して、コミュニケーション能力をさらに磨き、その過程で研究テーマを絞り込んでいきます」と髙松准教授は、授業のポイントを話します。
 また、「研究テーマが似通っていたり、共通するデータが使えるケースなどもあるので、共同研究ではありませんが、ゼミ生の間で、協力し合いながら進められる。意見交換をしながら互いに学び合えることは大きいです」と、小集団の利点を挙げます。

自主ゼミを積極的に活用 ~共に学びBorderを超える~

自主ゼミの様子
小牧和哉さん

 1・2回生時より3回生時の専門演習では、卒業論文制作などに向け高度な内容が求められます。「時間も限られており、統計学など難しい内容も増えてきます。学生たちには、私が担当する「心理学データ解析法」の受講を勧めるとともに、自主ゼミ活動を促しました」と髙松准教授。この自主ゼミでは、3時限目のゼミ終了後、続けて4限目に学生が自主的に集まり授業の復習はもちろん、統計分析手法に関する内容など、毎回テーマを決め、順番に発表するなどして互いに協力し合いながら学びを深めています。
 自主ゼミ長の小牧和哉さんは、「内容がどんどん難しくなってくるので、準備などは大変ですが、ひとりではなく仲間がいるのはとても助かります。気付かなかった点や分からないところも教え合うことができますし、思考の幅、視野も広がります。相手に分かりやすく伝える・説明する必要があるので、必然的にそうした能力は上がっていると思います」と、その効果を口にします。時には、激しい議論の場となることもあると言い、「互いに聞く力、意見をまとめる力も向上していると思います」と力を込めます。
 こうした能力を発揮できるのも1回生時からの基礎、小集団による仲間との絆、信頼関係の積み上げがあるからこそ。それぞれ目標とする将来像は違っても、互いに認め合い励まし合える仲間の存在が、その後の学びにも深く関係していることは疑いようもありません。確かに卒業論文は個々のテーマに沿って、それぞれが仕上げていきます。しかし、小集団授業の仲間と共に学び合うことで、より大きな成果を得ることができる。学生が”Border”を超える原動力のひとつとなっています。

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