2018.10.22 TOPICS

「グローバル教養学部だからできる学び」RU・ANU両教員インタビュー(前半)

 立命館大学16番目の学部として、来春、大阪いばらきキャンパスに誕生する、グローバル教養学部(GLA)。オーストラリア国立大学(ANU)とのデュアル・ディグリー・プログラムを学部全体の学びに取り入れ、世界水準の学びを提供します。GLAとはどんな学部なのか、学生たちは両キャンパスで何を学ぶのか。GLAの構想に深く関わってきた金山勉教授、ジェレミー・ユード博士に、これまでのあゆみを振り返りつつ、新学部の概要と今後の期待などをうかがいました。

グローバル教養学部(GLA)の2019年4月開設が正式に発表されました。

金山教授:本学がオーストラリア国立大学(ANU)と提携し、両国間の架け橋を築くとともに、質の高い教育のグローバル・スタンダードを打ち立てる機会を得たことを、とても光栄に感じています。グローバル化が進む中、高等教育の重要性はますます高まっており、本学は質の高い教育の提供に向けてまい進しています。ANUとの提携は、単なる2大学間の教育プログラムではありません。このプロジェクトには両国の高等教育関係者も注目しており、その責任の重さに身の引き締まる思いです。

ユード博士:オーストラリアと日本の教育機関が学部単位でデュアル・ディグリー・プログラムを実施するのは初めてのことです。今回のパートナーシップが実現しようとしていることは、2つのシステムを1つに統合するということではなく、学生がオーストラリアと日本、両方の大学で学び、両国の高等教育の恩恵を享受できる、というものです。 2014年、ANUと立命館大学は、デュアル・ディグリー・プログラムを協力してつくるという覚書に署名しました。その後4年にわたってプログラムの構想を練り、単位互換の方法を含め、さまざまな協議を重ねてきました。これらの検討には慎重さを要しましたが、両大学が一丸となって取り組んだ結果、素晴らしいプログラムが完成しました。

金山教授:かなりの集中協議でしたが、協力的、生産的に進めることができ、実り多い成果が得られました。高等教育における真のグローバルな提携と言えるでしょう。ANUから「うちの学生も日本に派遣したい」とのお話を頂いたときは、とてもうれしく思いました。ANUの学生10名は2年目と3年目の2年間を立命館大学で過ごした後、オーストラリアに戻って4年生となります。グローバル教養学部(GLA)からは約90名の学生が、2年目後半もしくは3年目から1年の間、キャンベラにあるANUのキャンパスで学んだ後、日本に戻って卒業までを過ごします。卒業時には両大学から1つずつ、計2つの学位を取得するわけです。これを私たちはデュアル・ディグリー・プログラムと呼んでいます。

金山勉教授
金山勉教授
協定締結式にて:ANUシュミット学長と
協定締結式にて:ANUシュミット学長と

このデュアル・ディグリー・プログラムでは、4年間で2つの学位を取得できます。「グローバル教養学」と「アジア太平洋学」の2分野を学ぶメリットは何でしょうか。

金山教授:このプログラムではグローバル教養学(リベラル・アーツ)に加えてアジア太平洋学を専攻できるわけですが、この2つはまさに絶好の組み合わせです。アジア太平洋地域についての深い知識と、さまざまな分野に応用できるスキルを身につけた卒業生は、間違いなく、国際的な企業や営利・非営利組織をはじめ、社会から引く手あまたの存在となるでしょう。

ユード博士:学生の皆さんには、在学中に教養を深め、異文化理解とクリティカル・シンキング(批判的思考力)のスキルを身につけてもらいます。ANUの学びはアジア太平洋地域と非常に深く関わっています。このプログラムにより、学生の皆さんは体験的な学びの機会に身を投じることができます。単に学ぶというのではなく、実際に「生きる」学びです。特定の職業に就けるように学生を教育するのではありません。政府関係、民間企業、非政府組織、国際機関など、このデュアル・ディグリー・プログラムの修了生が卒業後に進むかもしれないあらゆる道を考慮し、多くの多様な機会を提供します。2つの国、2つの大学で学ぶことで身につけたスキルが生かせる分野は、実に多岐にわたります。1つの学位を持ち、1つの教育機関で学んだ学生よりも、優位に立つことができるのではないでしょうか。

金山教授:リベラル・アーツを学ぶ学生には、将来の道を選ぶにあたり、幅広い選択肢があります。ユード博士も、リベラル・アーツのカレッジで学部教育を受けられたのですよね。リベラル・アーツに特化して取り組んだことは、ご自身にとってどのような意味がありましたか。

ユード博士:リベラル・アーツは学び甲斐のある学問です。なぜなら、クリティカル・シンキング、他者との関わり、地域社会に対する責任感、自分が地域社会の一員であるという自覚、地域社会に報いることで世界をよりよい場所にしようとする積極性に重きを置いているからです。大いに魅力を感じましたし、私のキャリア形成にも役立ちました。こうしたスキルは、多様性に富んだアジア太平洋地域における異文化間の関係構築・維持に欠かせません。


GLAでは専門知識を持ったアドバイザーが常駐し、手厚い学生サポートを行います。

金山教授:そのとおりです。本学は学生をとても大切にしています。立命館大学全体で実施している学生サポートシステムに加え、GLAでは独自の追加サポートシステムを設けます。ANUとも緊密に連携をとり、柔軟性のあるアドバイスを行います。両大学は優秀な教職員をそろえており、学生一人ひとりに手を差し伸べる支援体制が整っています。

大阪いばらきキャンパス
大阪いばらきキャンパス
グループワーク中の学生たち(立命館大学)
グループワーク中の学生たち(立命館大学)

GLAの学生は心強いサポートのもと、講座や講義を幅広い選択肢の中から選べます。

金山教授:本学は、講義選びや将来の進路選択における学生の主体性や意思を大いに尊重しており、そのために学生ポートフォリオシステムを設ける予定です。これにより学生一人ひとりが自らの輝かしい未来を思い描きながら、自分に合ったオリジナルの学業計画を立てることができます。

ユード博士:GLAの学生がANUのキャンパスで学ぶ際には、ANUコーラル・ベル・スクール・オブ・アジア・パシフィック・アフェアーズの提供する多彩な講座を選べます。興味・関心に応じて最適な講座を見つけられるよう、大学側がサポートします。また、立命館大学とANUが互いの講座を組み合わせることで、各学生が自分の関心に合った学習体験を組み立てることができます。専門的に学べる機会も提供しますので、自分が何に重点的に取り組みたいのかを見極めることができるのです。


独自のカリキュラムも、GLAの大きな特長です。

金山教授:GLAのカリキュラムには、3つの主な柱、3つの独自の中心分野があります。文化研究・地域研究を軸に世界を広い視点でとらえるCosmopolitan Studies、歴史的観点から世界を掘り下げて考察するCivilization Studies、現在の社会に焦点を当て、経営、脳科学、人工知能、技術革新などを取り上げるInnovation Studiesです。


日本人学生が日本について英語で学ぶこともできますね。

金山教授:日本についての学びもGLAのカリキュラムならではの要素です。海外で自国について英語で説明できるようにしておくべきでしょう。この点については、GLAの3つの柱に加えて「日本学クラスター(科目群)」というものがあり、学生の関心を高めるのに一役買います。他方で学生がANUで学ぶ際には、オーストラリアとアジア太平洋地域についても学んでもらいたいと思います。


インタビューの後半は10月29日に掲載予定です。

プロフィール

金山 勉(かなやま つとむ)
立命館大学グローバル教養学部設置委員会事務局長
立命館大学産業社会学部教授、グローバル教養学部学部長就任予定(2019年4月)
研究者データベース

ジェレミー・ユード(Dr Jeremy Youde)
オーストラリア国立大学アジア太平洋学コーラル・ベル・スクール副学部長(教育担当)、准教授
ANU Webサイト(英語)

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