「お互いさま」で支えあえる社会に

2019.01.17 TOPICS

「お互いさま」で支えあえる社会に 一般社団法人キャンサーペアレンツ理事 髙橋 智子さん(2001年文学部卒) 

 愛媛県松山市。2014年からこの地に住む髙橋智子さんは、一般社団法人キャンサーペアレンツで理事を務めている。キャンサーペアレンツとは、子どもを持つがん患者同士がインターネット上で相談をしたり励ましあったりするピアサポートサービスだ。会員数は1,900名※1を超え、2018年には日経ソーシャルビジネスコンテストで特別賞を受賞した。
 同法人の設立者・代表理事である西口洋平さんは髙橋さんの元同僚。大阪の職場で出会い、互いの居住地が変わっても年賀状のやり取りをする間柄だった。2016年4月1日、西口さんがソーシャル・ネットワーキング・サービスのFacebookで「2015年2月にステージ4の胆管がんであることを告知された」と公表した。告知を受けた当時、西口さんは35歳、6歳の子どもがいた。「彼は公表と同時に『つながりが生きるチカラになる。人生をかけてこの仮説を証明したい』とキャンサーペアレンツの活動開始を発表しました。深刻な病状にも関わらず、彼から伝わってきたのは『生きよう』とする強いエネルギー。そのエネルギーに感化され、私もできることから始めようと活動に関わり始めました」。

 髙橋さんは、ユーザーリサーチ兼カスタマーサポート担当として、利用者のインターネット上でのサポート、東京や名古屋、大阪で開催されるオフ会※2の運営などに携わる。活動を始めるにあたり、まずは自分ががんについて知らなければと、四国がんセンターの緩和ケア病棟でのボランティア活動や、がんをテーマにしたフォーラムに参加するなど、病気の知識だけでなく当事者の想いや心を知る活動に積極的に関わった。そして、知れば知るほど、がんは特別な病気ではないという想いを強くする。そして同時に「病気のことが職場に知れたら、仕事を続けられなくなるのではないか」「ママ友に知れたら心ないうわさを流されて、子どもも自分も居場所がなくなるのではないか」と、病気や治療の悩みに加え、環境や家族、他人との関係性が変わってしまうことを不安に思う人がいることを知る。「一言で“がん”といっても、がんの種類や生活環境等によって、治療や療養生活は人それぞれ異なります。しかし、それを理解せず『がんだから』という周囲からの偏見に苦しむ人もいるのです。そのような状況を少しでも変えたいと思い、がんについて正しい情報発信を始めました」。

 その1つが絵本『ママのバレッタ』の普及活動だ。主人公である少女の母親ががんになり、抗がん剤治療で髪の毛が抜けてしまう。自慢の髪をなくし、落ち込む母親を見て少女は「かみの毛なんてなくても、ママはママ。ママには生きていてほしい」と思い、母を励ます。また、闘病中の生活も少女の豊かな想像力でやわらかく描かれている。「この絵本は、子どもたちに恐怖心を与えず病気のことを正しく伝えたいという親としての想い、また、闘病中の不安を少しでも和らげることができればという仲間に対する想いも込められています。会員同士で絵本プロジェクトを立ち上げ、ストーリーもイラストも彼らの手によるものです」。髙橋さんは企業や県内の病院、図書館などに絵本の紹介をしている。
 キャンサーペアレンツの活動に携わって、価値観が大きく変わったと髙橋さん。「以前はボランティア活動などの社会活動に参加しておらず、今のように自分でPR 活動をするタイプではありませんでした。しかし、がんと向き合いながら『今』を大切にしている方々と出会ううちに、私も今できることを精一杯やりたいと思うように。会いたい、やりたい、伝えたい……。できることをできるときにやらないと、次のチャンスはないかもしれない。今を大切にしてこそ、次につながることをこの活動を通じて強く感じています。他の病気もそうですが、がんは決して他人事ではありません。生きる尊さを理解してくれる人が増え、『お互いさま』の精神でもっと生きやすい社会になるのではないかと思っています」。地域や年齢や立場を超えて、がんと共に生きる人たちも、そうでない人たちも支えあい、生きやすい社会をつくりたい。これが髙橋さんの切なる願いだ。

※1 2018年7月現在。
※2 インターネット上のコミュニティなどで知り合った人々が、現実世界(オフライン)で実際に集まって親睦を深めること。

出典元:校友会報「りつめい」No.274 (2018年10月号)

PROFILE

髙橋 智子さん
2001年文学部卒
一般社団法人キャンサーペアレンツ理事

仕事と両立させながら、一般社団法人キャンサーペアレンツの理事としてユーザーリサーチ兼カスタマーサポートを担当。愛媛県を拠点としてキャンサーペアレンツの情報発信を積極的に行う。▶キャンサーペアレンツホームページ  Facebook、Twitterでも活動情報を発信中。

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