新型コロナウイルスの感染過程と対応策の効果をモデル化

 テクノロジー・マネジメント研究科の児玉耕太准教授を代表とする研究チームは、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) に関する新たな分析モデルを作成し、感染の伝搬過程の分析に新たな切り口を見出しました。この成果は、学術誌「International Journal of Environmental Research and Health Sciences」で8月27日17時(日本時間)に公刊しました。
 COVID-19 は、無症状の感染者によって感染が広がるという性質があるため、感染拡大の実情が把握できず、講じた対策の効果も確認しにくいという課題があります。特に、政府による緊急事態宣言が公布された今春のような感染拡大期においては、検査能力の不足から、確定診断を有症状者に限定せざるを得ない状況が発生し、無症状感染者の動向は不確かでした。

 そこで本研究では、システム・ダイナミクス・モデル*1と呼ばれる概念を応用し、感染者が発症を経て検査に至る過程をモデル化しました。これにより、発症率から無症状感染者の影響を加味し、刻々と変化しうる感染伝播率を含む感染の全体像を把握する手法を開発しました(図)。また、対応策の効果の分析を行いました。分析にあたっては、公知の統計データに加え、一橋大学大学院経済学研究科帝国データバンク企業・経済高度実証研究センターに株式会社帝国データバンクより提供された企業ビッグデータを活用しました。

感染者プロセスと発症・診断の関係。斜体は使用した数値データを示す。
感染者プロセスと発症・診断の関係。斜体は使用した数値データを示す。

 今春の東京都、大阪府、北海道の感染者数を基に分析した結果、都市部の人口密度や社会活動と、感染の伝搬率の関係が示唆され、国や地方自治体による外出自粛の要請が感染抑制に寄与していたことを明らかにできました。今後は、都市の機能を維持しながらフィジカルディスタンシングを強化する社会に向けた、持続性のある対策を講じることが課題となると考えられます。

*1 システム・ダイナミクス・モデル:社会システムをモデル化し、数値シミュレーションによって関心のある事象の特徴把握や将来予測を行う技法。

論文情報

雑誌名:International Journal of Environmental Research and Health Sciences
論文名:Effectiveness of social measures against COVID-19 outbreaks in selected Japanese regions analyzed by system dynamic modeling
著者:児玉耕太(テクノロジー・マネジメント研究科・准教授)、丹羽誠(テクノロジー・マネジメント研究科・博士後期課程)、原泰史(一橋大学大学院経済学研究科・特任講師)、仙石慎太郎(東京大学・未来ビジョン研究センター)

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