理工学部の小西聡教授、及び坊野慎治講師、理工学研究科の筧悠吾さん(修士課程2回生)等は、マイクロ流体デバイスのマイクロチャネル(流路)内で液体金属の液滴をスムーズに輸送することに成功しました。

小西研究室では、半導体プロセスを利用したマイクロマシン、特にソフトマイクロマシンの研究を続けています。今回の報告内容は、液体金属を用いたマイクロマシンに関する基礎研究の成果です。液体金属は、柔軟な配線やセンサへの応用が注目される材料で、小西研究室でもソフトマイクロマシンへの有用な材料として注目し、研究を進めてきました。液体金属は、微細加工技術を用いて製作したマイクロチャネルに導入して用いることが多い中で、いくつかの課題も顕在化しています。

本研究では、マイクロ流体デバイス内でのガリウム合金液体金属(ガリンスタン)の液滴のスムーズな輸送を可能とするチャネル形状等の条件についての研究に取り組みました。ガリンスタンは流動性と高い導電性を備えており配線やセンサに適した材料ですが、ガリンスタンが大気に触れることで酸化膜が生成されてマイクロチャネルに付着し、マイクロ流体デバイス内でのガリンスタンの液滴のスムーズな輸送が妨げられる事象が確認されていました。ガリンスタンの液滴をよりスムーズに輸送可能とするシステムを開発すれば、ソフトマイクロマシンの性能をより向上することが出来ます。 本論文では、マイクロチャネルの形状や境界条件に焦点を当て、ガリンスタンの液滴をよりスムーズに輸送可能とする形状を紹介しています。チャネルの材料や形状、ガリンスタンと併用して導入する液体等がガリンスタンのマイクロチャネルへの付着に与える影響を調査し、液滴のスムーズな輸送に有効なチャネル形状を開発しました。これにより、液体金属の酸化膜による液滴輸送への影響という課題を解決し、高性能なマイクロ配線やセンサ実現の可能性をさらに広げることが出来ます。

本研究成果は、2021年3月29日に英国科学誌Scientific Reports(オンライン版)に掲載されました。

 

論文情報

関連情報

NEXT

2021.05.06 TOPICS

【shiRUto】タンザニア人零細商人の“したたかさ”に見る「シェア」の新概念

ページトップへ