生命科学部 幹細胞・再生医学研究室の中尾周 講師(現・応用分子生理学研究室)が、イギリス・マンチェスター大学のMark Boyett教授、Alicia D’Souza博士、フランス・モンペリエ大学、デンマーク・コペンハーゲン大学、オランダ・マーストリヒト大学との国際共同研究で、持久スポーツのアスリートに発生する不整脈の一つである房室ブロックの分子メカニズムとして心臓イオンチャネルたんぱく質の機能障害を突き止め、さらにたんぱく質をコードしない遺伝子DNA領域から生成されるマイクロRNAが関与していることを解明しました。本研究成果は、2021年4月14日に米国心臓協会誌「Circulation Research」に掲載されました。

 

アスリートには安静時心拍数が低い選手が多くいるように、長期間の持久スポーツはある種の心拍異常(=不整脈)を引き起こします。中でも、心房と心室の連動が悪くなる房室ブロックという不整脈の発生頻度は高く、晩年に治療が必要な程度にまで悪化することが知られていますが、その詳細な原因メカニズムは分かっていませんでした。

本研究では、房室ブロックの分子メカニズムを明らかにするために、運動させたマウスおよびトレーニング歴のあるウマを不整脈モデル動物として用いて、動物個体から分子レベルにおよぶ多角的な解析を実施しました。その結果、持久運動によって心臓ペースメーカ機能の低下したマウスおよびウマのいずれにおいても、心房と心室をつなぐ唯一の電気的な伝導経路である房室結節で、心筋細胞の電気活動を制御するイオンチャネルたんぱく質(特にCa2+チャネルおよびペースメーカチャネル)の量的および機能的低下が生じており、そこには、たんぱく質を作る情報をもたない遺伝子DNA領域から作られるマイクロRNA(miR-211-5pおよびmiR-432)が関与している可能性を明らかにしました。

本研究成果は、人間のアスリートに発生する不整脈の根本原因となる新たな分子メカニズムを提唱するものです。また、見出されたマイクロRNAを抑制する方法の開発は、運動によって引き起こされる不整脈の新たな治療選択肢として、機械式ペースメーカ移植治療を受けるリスクの低下に貢献することが期待されます。

 

心房と心室の連動が障害される房室ブロック

心臓刺激伝導系の構成領域のひとつである房室結節において、長期間の持久運動が遺伝子発現の抑制作用をもつマイクロRNAを増やし、イオンチャネルたんぱく質の発現量および機能を低下させる。その結果、心房と心室の連動が障害される房室ブロックを引き起こす。

※本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業・若手研究、内藤記念科学振興財団、中冨健康科学振興財団、稲盛財団の支援を受けています。

 

論文情報
  • 発表雑誌:Circulation Research
  • 論文名:Intrinsic Electrical Remodeling Underlies Atrioventricular Block in Athletes(アスリートの心臓における電気的リモデリングが房室ブロックを引き起こす)
  • 著者:Pietro Mesirca, Isabelle Bidaud, Matteo Mangoni(フランス・モンペリエ大学)
    中尾 周(立命館大学、共同筆頭著者)
    Sarah Nissen, Helena Cartensen, Thomas Jespersen, Rikke Buhl(デンマーク・コペン ハーゲン大学)
    Paula Martins(オランダ・マーストリヒト大学)
    Gabriella Forte, Cali Anderson, Tariq Trussell, Jue Li, Charlotte Cox, Min Zi, Sunil Logantha, Sana Yaar, Luke Stuart, Luca Soattin, Gwilym Morris, Elizabeth Cartwright, Delvac Oceandy, Halina Dobrzynski, Mark Boyett, Alicia D’Souza(イギリス・マンチェスター大学)
  • 掲載URL:https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCRESAHA.119.316386
  • DOI:10.1161/CIRCRESAHA.119.316386

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