開発チームとトンネル水槽

2016.07.14 NEWS

「魚が聞いている音」を聞いてみよう
理工学部無線信号処理研究室が琵琶湖博物館に水中音放送装置を提供

 立命館大学無線信号処理研究室(久保博嗣 理工学部・教授)は、7月14日(木)にリニューアルオープンした滋賀県立琵琶湖博物館において、博物館との共同研究を通じて、館内のトンネル水槽における水中音放送展示に関する技術研究を実施し、新たに開発した装置を提供いたしました。

 無線信号処理研究室では、水中音響通信のフィールド評価を琵琶湖博物館駐車場横の浅瀬で実施しており、そのことを契機として共同研究が始まりました。研究にあたり、琵琶湖博物館と無線信号処理研究室による共同研究のテーマ選定の議論を行い、今回のリニューアルコンセプトである「五感で世界を読み解く展示」の実現に貢献するため、水中音放送展示を共同研究のテーマに設定することになりました。

<水中音放送展示に搭載した特徴的な3つの技術>

  1. 無線信号処理研究室が注力している水中音響通信における高感度の音波検出技術
  2. 水槽の水中音に混入するポンプ音等の雑音成分を除去する信号処理技術
  3. 上記 1 2の処理をリアルタイムで実施する音響信号処理PCプラットフォーム
    (協力者:(株)乃村工藝社,(株)オキシーテック)

 今回開発された「水中音放送装置」によって、魚が聞いている水中音をトンネル水槽の外でも聞くことができるようになり、展示水槽を視覚に加え、聴覚でも体感できるようになりました。今回の共同研究によって、子どもから大人まで楽しめる「驚きと感動」「学びと発見」の機会に満ちた発信力の高い展示施設の実現に貢献いたしました。

久保教授のコメント
無線信号処理研究室では、来館者が自然環境に近い水中音をライブで聞くことができる装置を開発しました。水族水槽中の水中マイクで取得した音には、水中音の他、ポンプなどの雑音成分も混入しています。開発した装置では、雑音成分をパソコン上で動作するプログラムにて除去して、聴覚的に遅延のない水中音を放送しています。なお、これらの装置は、無線信号処理研究室の学生達が力を合わせて開発したものです。ぜひ琵琶湖博物館にご来館頂き、水中音をご視聴下さい。



水中音放送装置の説明パネル
水中音放送装置の説明パネル
水中の集音マイク
水中の集音マイク

展示施設概要図
展示施設概要図

【補足説明】
(水中音響通信)
 水中では電波が通じにくいため、水中通信は音波による水中音響通信が主流となっています。近年、海洋資源開発への期待の高まりに伴い、水中音響通信への期待が高まりつつあります。しかし、音速は光速の20万分の1であることから、物体の移動に伴うドップラー変動やエコーの遅延時間が電波の20万倍となります。それゆえ、水中音響通信は無線通信の中で最も厳しい環境の一つと言われています。無線信号処理研究室は、この厳しい水中音響通信環境に対応できる無線通信方式、具体的には、「マルチキャリア予測形差動時空符号化」という技術の研究を実施しています。

(雑音成分除去技術)
 水中雑音は、低周波数成分が多いことが知られています。また、水槽にはポンプのような人工的な雑音源も存在する上、水槽の壁面等による音響反射も発生してしまいます。今回研究開発した装置は、このような水槽環境の雑音成分を効果的に除去する処理を行っています。なお、今後は、博物館のトンネル水槽内の水中音の性質をより詳しく調査して、雑音除去効果の更なる改善を目指す予定です。

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