薬学部ピアサポート

実務体験で6回生が1回生を指導

薬学部の6年間の学びと将来をイメージ
ファーマアシスタント1
実務体験で6回生から直接指導を受ける1回生
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先輩の説明に熱心に耳を傾けた
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先輩の手際の良さに関心するばかり

 立命館大学には正課・課外に関わらず学生同士が学び合う「ピア・ラーニング」「ピア・サポート」という伝統的な取り組みがあります。その代表的なものが上回生のオリターやエンター、ES(エデュケーショナル・サポーター)、TA(ティーチング・アシスタント)を各授業に配置するもので、1回生の基礎演習など小集団授業に参加して指導・援助にあたります。大学生活や学習に不安を持つ1回生にとっては学びの礎を築くこの重要な時期に、先輩からの貴重なアドバイスをもらえるなどのメリットがあり、また、指導・援助する側の上回生にとっても、学びの振り返りや実践力強化、積極的に他者に関わる姿勢を育む(コミュニケーション能力を高める)機会ともなっています。
 6年制の薬学部薬学科では、ピア・サポートの一環として5・6回生が1・2回生などの授業の指導・援助を行うPh.A(ファーマアシスタント)という制度を導入しています。ここでは1回生の「薬学基礎演習」におけるPh.Aについて紹介します。

百聞は一見に如かず

先輩の姿から学ぶ
ファーマアシスタント4
先輩の姿から将来をイメージ
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分かりやすさを心掛けなら指導にあたる6回生

 薬学部は1学年160人前後と少数で、先生・職員と学生、学年の壁を超え学生同士の距離が近いのが特徴です。そうしたつながりの深さを生かし、薬学科では2015年度から1回生が学ぶ『薬学基礎演習』に6回生がPh.Aとして講師役を務める実務体験を導入しています。
 同学科の場合、そのほとんどが将来、薬剤師となり病院や薬局、企業などに就職します。ひとくちに薬剤師と言っても、働く姿が見えにくく、以前から「仕事内容などがイメージし辛い」という声が多くあがっていました。そこで1回生の段階から将来の働くイメージを描き、高いモチベーションを保ちながら6年間を過ごしてもらおうと始まったのが実務体験(散薬・錠剤実技、水薬実技など)です。病院や薬局での実務実習を終え成長したPh.A(6回生)の指導を受けながら、実際に散薬や水薬を調合する実技を体験し、6年後の自らを思い描いてもらうことが大きな目的となります。

■ 理想の薬剤師像とは 6年の差を実感
 6回生の指導を受けた1回生の影山奈未さんは、「入学までずっと受験勉強だけに打ち込んできたので、これまでなかなか将来のことをイメージする余裕がありませんでした。先輩方にいろいろな質問をしましたが、患者さんのため、困っている人のために自分たちはどうすればいいのか、どう動けばいいのかを軸に具体的に話していただきました。先輩とお話するまでは、どこか医療現場では医師がすべてという考えでした。でも、看護師や介護士、理学療法士、薬剤師などそれぞれの専門家がチームで関わっていかないと医療は成立しないことが分かりました」と、考え方の変化を話します。
 さらに調剤の体験では、「動作に無駄がなく、私たちもあんなにテキパキとできるようになるのか不安になりました」と6年の差を実感。「先輩からお話を聞き、技術だけでなく、命の大切さ、医療チームに関わっていく上での倫理観を身に付ける重要性を再認識しました」と、貴重な時間を振り返ります。他の学生からも、6回生の先輩たちの姿を見て、目指す薬剤師像、進むべき道をイメージし、モチベーションをアップすることができたなどの感想が聞かれました。

教わる側から教える側へ

6回生が1回生の立場に立って伝え方を工夫
インタビュー学生4人
今回インタビューに応えてくれた薬学科6回生のみなさん(左から山下・中村・植野・太田さん)
ファーマアシスタント6
「今後も1回生とつながりを持つ場面を増やしていきたい」と話す6回生のみなさん

 一方、アドバイスする側だった6回生の中村彩香さんや山下加珠美さんは、「私たちが1回生の時は、まだ6回生がいなかったので、自分の将来像がイメージできず目標も立てにくい状況でした」と苦労を振り返ります。だからこそ、「こういう上回生になりたい、薬剤師ってこんな仕事ということを具体的にイメージしてもらえるよう工夫しました」と山下加珠美さんや植野琴央さんは語気を強めます。
 同学科では5回生全員が病院と薬局で、それぞれ11週間の実務実習に参加します。それを終えた6回生が、患者さんと接した体験や失敗談なども含めた実体験をもとに説明するので「先生や企業の人よりも身近な存在なので聞きやすかった」「1年の間に何をしておくべきなのかなども分からなかったので、話を聞けてよかった」「就職のことも聞け、とてもためになった」「薬剤師の仕事がよりやりがいのあるものに感じました」などの声が多く聞かれました。
 なかでも1回生のほとんどが漠然と「薬剤師」というイメージしかなかった就職のことなども、6回生の就職活動時期とも重なりタイムリーなトピックとなりました。質問内容のいずれもが6回生自身が1回生当時思い悩んだ事柄でもあり、適切なアドバイスとなったようです。
 また、「自分の知識を並べるだけは説得力がないので分かりやすさを心掛けました。まだ薬学的知識のない1回生に説明した経験は、来春から薬剤師として働く上でも役立つと思います。目線や表情、声のトーンがコミュニケーションでは重要なポイントとなることを再確認するなど、とてもいい勉強になりました」と今回集まってくれた4人は口を揃えます。コミュニケーション力の向上、伝え方の工夫など教える立場の6回生にとっても大きなメリットとなっています。「とにかく1回生は分からないことだらけ。実務体験だけでなく、さらにいろいろなところでつながりを持つ場面を増やしていきたい」と6回生のみなさんは話します。
 先輩の姿に未来の自分を重ね合わせて日々の学びに取り組む1回生。後輩の姿に過去の自分を重ね合わせて支援を惜しまぬ6回生。このように学年や経験の違いを超えて学生が互いに切磋琢磨しながら成長する仕組みが立命館大学にはあります。

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2016.08.02 TOPICS

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