高野山でインターンシップ?

新聞を読んでみる(う~ん…)
紙すき教室で作った手作りはがきにメッセージを書く

 文学部では、2015年より株式会社毎日新聞社と連携したインターンシップを実施しています。
 インターンシップでは、毎日新聞社主催の「こども高野山夏季大学※」に参加するこどもたちを支援するサポーターとして、文学部の学生が参加します。今年は、7月28日~31日までの3泊4日で行われ、公募で集まった文学部の学部生・大学院生、中国やトルコからの留学生など計14名が参加しました。
 こどもたちとの対話や、普段経験しない日本古来の文化との遭遇、そして自然の中での世代を超えた共同作業を通じ、学生たちは自分たちの強みや弱みを知り、文学部での学びにつながる経験や将来の進路を考えるきっかけが得られたようです。

※こども高野山夏季大学とは?
和歌山県の霊峰・高野山で小学生が夏の思い出を刻む「第10回こども高野山夏季大学」を開催されました。宿坊に寝泊まりし、多彩な講座を通じて「いのち」の大切さを学び、豊かな感性を育むことが目的です。今年は、約60名の小学4年生から6年生までの児童が参加し、宿坊寺院「常喜院」で7月28〜31日の3泊4日間の共同生活をしながら、さまざまな学びの講座を体験しました。

 文学部は、教育学や哲学などを学ぶ人間研究学域、日本史や考古学・文化遺産を学ぶ日本史研究学域、東洋の文化や歴史、言語などを学ぶ東アジア研究学域など、多様な研究分野を有しています。
 「こども高野山夏季大学」では、こどもたちのリーダーとして、教育的な視点を持ち、こどもたちの成長を支援する力が求められます。また、開山1200年を越え、世界遺産としても認定されている高野山での学習は、日本の歴史・文化遺産を肌で感じるまたとない機会です。
 加えて、インターンシップ中には毎日新聞の記者やカメラマン、事業部の方からの新聞の読み方講座や写真講座なども開催され、新聞社の仕事を体験することもできます。「こども高野山」での経験は文学部での学びにつながるものが多く、参加学生たちが、正課で学んだことをインターンシップで深めたり、インターンシップで学んでことを正課で活かすことを期待して実施しています。

 本インターンシップは、事前研修とこども高野山夏季大学の2段階で構成されています。
 まず、事前研修は7月上旬に3日間行われました。
 1日目は、「こども高野山夏季大学」の趣旨や目的について、衣笠キャンパスにて、毎日新聞事業部の方から説明をしていただきました。また、上野隆三・文学部副学部長よりインターンシップに参加する意義についての紹介もあり、上野副学部長からの「インターンシップを、これからのキャリアや文学部での学習にぜひつなげてください」という言葉がありました。
 2日目は、「こども高野山夏季大学」の特別協賛企業である雪印メグミルクの谷牧場にて、酪農の仕事についてのレクチャーと、「こども高野山夏季大学」で、学生がこどもたちに教える、“紙すき”の作業について学びました。最初は、慣れない様子の学生たちも、自分たちが指導役となってこどもたちに教えるという意識からか、真剣に取り組み、最終的には全員がマスターしていました。
 3日目は、毎日新聞大阪本社にて、新聞社の仕事について学びました。記者・校閲・イベント・広告など新聞社の様々な仕事を学び、多くの学生は新聞社の仕事の多様性を知り、驚いた様子でした。

 7月28日~31日までの「こども高野山夏季大学」では、初日の結団式で学生たちと小学生が初対面。
 こどもたち10名に対して、2~3名の学生がリーダーとしてサポートに入りました。お互い最初は緊張した面持ちでしたが、自己紹介などを通じて次第に打ち解けました。
 バスで高野山まで移動し、初日はハイキングや天体観測などを行い、宿坊寺院「常喜院」で、こどもたちと布団を並べての就寝。なかなか言うことを聞いてくれないこどもたちに四苦八苦しながらも、学生たちは根気強くこどもたちに言い聞かせていました。

 2日目、3日目、4日目と新聞読み方教室、紙すき教室、写真撮影の練習、ムササビ観察、阿字観体験、奥の院の体験、カレー作りなどなど、学生たちはこどもたちとともに様々な体験を行いました。
 中にはこどもたちとのコミュニケーションに苦労する学生もいましたが、学生同士でミーティングなどを行い、チームが上手くまとまるように、こどもたちが安全に楽しく過ごせるようにと、話し合いを重ねました。結果、最後までこどもたちは大きなケガもなく、4日間を終えました。

 「こども高野山夏季大学」のイベントの様子は毎日新聞の記事で紹介されていますので、ぜひそちらをご覧ください。

 

涙の解団式

みんなでラジオ体操!(眠いZzz)
精進料理を美味しく頂く
カレー作りに挑戦!

 最後の解団式では、サポートスタッフのリーダーを務めた沼田将志さん(東洋史学専攻・4回生)が「リーダーとしてサポートする立場にありながら、小学生のみんなから学ぶことがいっぱいありました。大変だったけど、一生忘れない思い出ができました。本当にありがとう」と、挨拶を行いました。
 解団式後は、大学生は保護者の方々やこどもたち一人ひとりに高野山での様子の報告とお礼の言葉を掛けていました。
 泣きながらリーダー役の大学生と別れを惜しむ女児の姿や、照れながらも最後までリーダー役の大学生と握手した手を離さない男児の様子がとても印象的でした。

参加した学生たちの感想

真剣な眼差しで話に聞き入るこどもたち
ハイキングの途中で「ヤッホ~!」

事後研修として課した学生たちのレポートでは、

 「このインターンシップは楽しいことばかりではなく、苦労したり考えさせられることがたくさんあり、自分は先生に向いていないのかなと悩むこともありました。しかし、こどもの何気ない“ありがとう”を聞いたとき、そういった気持ちは吹き飛びました。もしかしたら、仕事が大変でありながらも先生という仕事を続けている人たちは、たくさんの苦労の中にあるこどもたちからの一言を糧に先生をしているのではないかと自分なりに感じました」(教育人間学専攻3回生:教職課程履修者)や、

 「交換留学やサークル活動の監督、アルバイトに至っても大学生という枠組みの中でしか活動できていませんでしたが、インターンシップでは自分たちの失敗は毎日新聞の責任となってしまいます。そこに自覚と責任感を持つことができました」(東洋史専攻4回生)、

 「私の研究テーマはこどもと遊びとかかわっているので非常に貴重な経験でした。このインターンシップは日本のこどもたちと初めて長く過ごす機会でした。私は外国人なので最初から言葉が通じるかは少し心配していましたが、上手くいってよかったです。来年もリーダーとしてぜひ参加したいと考えています」(教育人間学専修:トルコからの留学生)

などの感想が見られました。

 また、参加した小学生と父母へ毎日新聞社が実施したアンケートでは、「スタッフ・大学生リーダー・看護師らの対応」という項目で、
 「とてもよかった」が91%、
 「よかった」が7%、
 「まあまあよかった」が2%
とほぼ全ての参加者が学生たちの対応に満足したという結果となりました。

 インターンシップで学生たちが学ぶだけでなく、関わった子どもたちや関係者の方々に評価してもらえたことは、学生たちにとって大きな自信となりました。

 学生レポートおよび毎日新聞からの参加者アンケート報告の結果を踏まえ、大学生と小学生の学び合いの効果が大きいことから、次年度以降もインターンシップを継続していくことが決まりました。来年度以降は、キャンパスアジア・プログラムでの中国・韓国からの留学生と文学部の学生が混合で参加する形で実施していくことを予定しています。


(沼田将志さん 東洋史学専攻4回生)
予定通りにスケジュールをこなすことは大変でしたが、平等に接することと積極的にこちらから声をかけるように心がけました。真剣に接すると真剣に応えてくれる、楽しく接すると子どもたちも笑顔に…。その笑顔が日々の疲れを忘れさせてくれ、一生懸命に作業する姿が励みになりました。

(ZHANG Yafeiさん 大学院 現代東アジア言語・文化学専修 2016年9月修了)
安全に過ごせるように子どもたちをサポートするという責任感が芽生え、リーダーシップを身につけることができ、子どもたちが成長する過程で自分たちも成長することができました。

(2人)
世界遺産である高野山の宿坊で子どもたちと過ごし、純粋な気持ちを取り戻すことができた素敵な四日間でした。


「写真提供:毎日新聞社」

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