難民・国内避難民問題を考える 国際平和ミュージアムでワークショップを開催

 6月14日、立命館大学国際平和ミュージアムにおいて、「NGOワークショップ 難民・国内避難民×イラク ~JVCと現地NGOインサーンのイラク中北部キルクーク市での取り組みについて~」を開催しました。
 国際平和ミュージアムで活動する学生ミュージアムスタッフが、難民・国内避難民問題の実態について学ぶことを目的に企画し、30名を超える学部生・大学院生が集まりました。

 講師には日本国際ボランティアセンター(以下、JVC)でイラク事業を担当する池田未樹氏を招きました。冒頭に、池田氏から「イラクのイメージを3つ考えてください」という質問が出されました。参加者からは「紛争」「中東」「バグダット」「イラク戦争」「スンニ派」などが挙げられました。この回答に対し、池田氏からは「みなさんの知っているイラクにはあまりポジティブなイメージが無いかもしれません。しかし、現地に入ってイラク人から話を聞いていると、イラク人の気質は関西人と似ていたり、家庭料理のレベルが高くどれも美味しかったり、日本人に対してとても友好的な面が見えてきます。また、かつてはスンニ派とシーア派の間に争いはなく、若い頃はミニスカートを履いてクラブなどでよく一緒に踊っていたというエピソードもあります」と、参加者の知らないイラクの人々の暮らしや人柄、イラク戦争以前・以後の変化、課題や現地のNGO団体と共にJVCが取り組む教育事業について、映像や写真などを交えながらお話いただきました。

イラクのイメージを書き出す参加者たち
イラクのイメージを書き出す参加者たち
JVCの池田未樹氏
JVCの池田未樹氏

 その後4つのグループに分かれ、身体を使った「非暴力トレーニング」※と呼ばれるワークを参加者全員で実施しました。ワークを通して、参加者はお互いを知り合い、信頼関係を強め、非暴力的な生き方の糸口を学ぶとともに、頭では平和を構築したいと考えていても、実際には身体がそれを拒む動きをすることがいかに多いかということに気付かされました。
 イラクでは、イラク戦争を機にコミュニティが崩壊し、宗派による対立や国内避難民とその受け入れをした地元民との間での軋轢などによる日常的な緊張状態が続いています。元々は宗派関係なく交流が盛んだったころのイラクを取り戻そうと、負の連鎖を断ち切るために次世代を担う子ども向けの平和教育が重要と考えられているそうです。参加者たちは、グループに分かれて身体を使ったワークショップを繰り返しながら、仲間同士の信頼関係を強めることや社会や身近な問題の解決、非暴力的な生き方の大切さを学びました。

イラクの子どもたちへの平和教育の様子
イラクの子どもたちへの平和教育の様子
身体を使ったワークショップの様子
身体を使ったワークショップの様子

 池田さんいわく、いまの子どもたちは生まれた時から紛争の中に生きていて、平和だった頃のイラクを知りません。JVCでは現地のNGOと協力し、子どもたちが肌や髪の色、言語、宗派の違いのために争うのではなく、違いを認め合い共生できるような社会をつくれるよう、これからも教育事業に取り組んでいきたいと考えているそうです。イメージだけでイラクを見ずに、もっとイラクのことを知ってもらいたいと参加者たちにメッセージを投げかけられました。
 参加者からは「平和教育への気持ちが強く伝わり、イラクに行ってみたくなった」や「中東情勢についてより詳しく、現地目線で学んでいきたいと強く思うようになった」という感想が聞かれました。

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