デジタルアーカイブによる日本文化・芸術資料の世界共有化研究 | 世界の博物館・美術館に眠る日本の美術・工芸品をデジタルアーカイビング。

「日本文化大使」の役割を果たす 世界に散らばる日本の美術・工芸品

日本の美術・工芸品を巡っては、明治政府の外貨獲得を目的とした輸出政策もあり、欧米を中心に大量に輸出された歴史を持ちます。これらが日本の文化を饒舌に語る優秀な「日本文化大使」として果たした功績は、決して小さいものではありません。大英博物館やボストン美術館のような世界に名を馳せる博物館の日本部門の展示品や収蔵品の圧倒的なレベルの高さ、数の多さを見ても、世界の中で日本がいかに豊かな文化を築いてきたかを実感できるでしょう。しかしこうした美術・工芸品の多くは、現在、博物館の倉庫に眠っていたり、博物館の中でのみ存在が知られているにすぎず、日本文化の情報共有化は実現していません。

こうした課題を解決するものとして、本プロジェクトは、独自のデジタルアーカイブ技術を活用した、世界の博物館を横断する「文化資源」学術情報の共有化を推進しています。

独自のデジタルアーカイブ技術で博物館・美術館の日本美術品をアーカイブ

本プロジェクトの基盤となるのが、立命館大学アート・リサーチセンター(ARC)が拠点となって開発してきたデジタルアーカイブ技術です。現在、ARCが有するイメージデータベースは、代表的なものでも浮世絵約25万枚、舞台写真約16万枚、古典籍1万3千点、歌舞伎浄瑠璃番付2万件などに及びます。

短時間に大量の美術・工芸品を撮影する方法を開発、定着させたこと、少人数で海外携帯可能な機材を揃えていること、また修復・保存、資料に対する専門的な視点による撮影ノウハウを確立させたことなど、他にはないノウハウの蓄積が私たちの強みです。このメソッドは、現在、ARCモデルとして欧米の大規模博物館・図書館でも認知されるに至っています。これまでにも大英博物館の日本部門が管理する浮世絵や版本をデジタルアーカイブしたのをはじめ、フランス、ドイツ、ベルギーなどで、数々の実績を重ねています。2010年2月からは、海外の日本美術品収蔵で最も有名な博物館の一つ、イタリアのキヨッソーネ博物館との共同によるアーカイビングも始めています。その他、チェコ国立博物館・美術館、ベネチア国立東洋博物館、アイルランドのチェスタービーティー図書館、アメリカのスミソニアン博物館など、数多くの博物館でもアーカイビングを進めています。

デジタルデータベースを公開し世界のデジタル資源の集積地に

プロジェクトでは、これまでの実績を礎に、構築してきたネットワークを拡大し、巨大博物館のみならず、欧米に数多く存在する国立系を含む日本美術品収蔵機関と連携を図りながら、可能な限り数多く、網羅的にデジタルアーカイブし、日本芸術研究資源共有化の波を大きく広げていきたいと考えています。

こうしたデジタルアーカイブのもう一つの重要な側面として、若手研究者の育成効果が挙げられます。デジタルアーカイブの過程で、若手研究者が修復やアーカイビングの知識や技術を身につけるのみならず、本来なら決して目にすることのできない貴重な美術・工芸品の現物を目の当たりにし、手に触れる機会を得ます。こうした体験の蓄積が、研究者としての成長に大きく寄与することは言うまでもありません。

さらに私たちのプロジェクトの最大の特長は、アーカイブした情報をイメージデータベースとして公開している点です。利用者の視点による独自のWeb閲覧システムを完成させ、これによって世界中に散らばる貴重な日本の美術・工芸品を日本芸術研究資源として共有するだけでなく、立命館大学が、世界のデジタル文化資源の集積地として大きな役割を担うことになるでしょう。

デジタルアーカイブ、ジャポニスム、工芸美術、博物館ネットワーク、浮世絵

赤間 亮 教授

赤間 亮 教授

1991年 早稲田大学文学研究科芸術学(演劇)博士。文学修士。'91年 立命館大学文学部講師。'96年 同助教授。'00年 教授。'02年 ロンドン大学SOAS客員研究員。'04年 立命館大学先端総合学術研究科教授。'09年 立命館大学アート・リサーチセンター長、現在に至る。国際浮世絵学会、歌舞伎学会、日本近世文学会、楽劇学会に所属。'88年 歌舞伎学会奨励賞、'08年上野五月記念日本文化研究奨励賞を受賞。

研究者の詳しいプロフィール
立命館大学研究者データベース:赤間 亮
立命館大学グローバルCOEプログラム 日本文化デジタル・ヒューマニティーズ拠点
立命館大学グローバルCOE 赤間研究室

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