歴史都市京都のデジタル・ミュージアム | デジタル・ミュージアムで京都の時空をバーチャルに旅する。

京都の有形・無形の文化資産を「バーチャル京都」に再現

私たちは、都市景観、絵画、祭事など、京都を中心とした有形・無形の貴重な文化資産をデジタル・アーカイビングすることに取り組んできました。その成果は世界レベルでの研究や、若い研究者のための教育に活用されています。さらに次の展開として、社会・地域にも貢献したいと考え、進めているのが「デジタル・ミュージアム」の実現です。

本プログラムでは、すでに構築している歴史都市京都のバーチャル時・空間「バーチャル京都」をプラットフォームとして、同じく蓄積してきた浮世絵や舞踊をはじめとする有形・無形の文化財のデジタル・コンテンツを配置し、Web上に日本文化の「デジタル・ミュージアム」を完成させることを目的としています。

最先端の地理情報システムGISと仮想現実技術で4次元空間を実現

「デジタル・ミュージアム」のいわば舞台装置となる「バーチャル京都」とは、最先端の地理情報システム(GIS)と、仮想現実(Virtual Reality:VR)技術を用い、京都特有の街並み景観をコンピュータ上に再現したものです。上空からのレーザー測量データによって地表面とすべての建物の高さを計測し、それに2次元のデジタル住宅地図の家屋形状と、レーザー測量技術を使って作成された3次元都市地図(MAP CUBE®)を重ね合わせ、リアリティのある3次元地図を完成させました。

「バーチャル京都」の特長の一つは、3次元に時間次元を加えた4次元空間を実現した点です。昭和期に撮影された航空写真や町並みの写真から、大正・明治期に作成された『京都地籍図』などの地籍図、さらには室町時代から江戸時代に描かれた『洛中洛外図』といった屏風まで、写真、地図・絵図、絵画などさまざまな2次元データをデジタル化し、現在のみならず、過去の街並みまでも仮想空間上に3次元化することに成功しています。歴史都市京都の過去から現在、未来に至る変遷をバーチャルな時・空間で再現することが可能なのです。

祇園祭の3次元モデルをバーチャル京都に配置

プロジェクトでは、まず「バーチャル京都」に有形・無形の京都独自の日本文化コンテンツを配置することに取り組んでいます。その一つが、鉾の道として知られる新町通りの現在から過去(南北朝時代)までの景観を復原し、そこにバーチャル祇園祭を再現する試みです。山鉾のみならず、観衆や音を含めた臨場感あふれる祭りの空間すべてを再構築します。山鉾の3次元モデルを作成するのに必要な3次元形状と外面の精緻なデジタル画像を得るため、2009年7月、祇園祭で船鉾に密着し、鉾建て・部材、お囃子、装飾品、町家・蔵のデジタルアーカイブを試験的に実施しました。次いで2011年の祇園祭後には、部材をすべてデジタルアーカイブし、組立工程をバーチャルに再現することを計画しています。

また京町家、近代建築、代表的な神社・寺院といった建築物文化財の3次元形状モデルを取り入れた、都市景観の復原にも取り組んでいます。その一環として京都市と、そして多くのボランティアの方々とともに、京都市街にある約4万8千軒の京町家すべての位置情報と外観情報をGIS化し、さらにファサードをデジタルカメラで撮影しました。続いてこれらの情報をバーチャル京都の中に取り込んでいきます。今後はさらに近代建築についても情報を収集し、京都の現在、過去、未来の都市景観復原に活用していくつもりです。

いずれはこの成果をバーチャル・ミュージアムとして公開する予定です。この試みを通して、これまで十分ではなかった京都市内の博物館・美術館との連携も強められるのではないかと期待しています。それと同時に社会の多くの人が膨大な貴重な文化資料を仮想体験できる稀有なミュージアムとなるに違いありません。

デジタル・ミュージアム、デジタル・ヒューマニティーズ、地理情報システム、日本文化、京都

矢野桂司 教授

矢野桂司 教授

1988年 東京都立大学大学院理学研究科地理学専攻博士課程中途退学。博士(理学)。'88年 東京都立大学理学部助手。'92年 立命館大学文学部助教授。02年 立命館大学文学部教授、現在に至る。東京大学空間情報科学研究センター客員教授、日本学術会議連携会員。人文地理学会(理事)、地理情報システム学会(代議員)、日本地理学会(代議員)などに所属。'92年 日本地理学会研究奨励賞、'03年 ディジタル・シルクロード賞(Digital Silk Roads Prize)(ポスター・デモ部門)、'09年 平成20年度シンフォニカ統計GIS活動奨励賞を受賞。

研究者の詳しいプロフィール
立命館大学研究者データベース:矢野桂司
バーチャル京都

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