Interview 教育・研究の質向上をめざして
2020年そして2020年以降の学園のあるべき姿「R2020後半期及び以降の基本政策」を策定 ~「多様性のある環境」と「主体的な学びの場」の創出のさらなる推進を~
建山和由

建山和由(たてやま かずよし)
学校法人立命館 常務理事(教学担当)

R2020学園政策起草委員会 事務局長

R2020後半期及び以降の基本政策へ

「R2020後半期及び以降の基本政策」の提起が行われました。

R2020は、2011年に2020年の学園の姿とそれを実現するための基本計画として取りまとめられました。同時に2011年度から2015年度の基本計画として前半期計画要綱が作成され、現在その具現化が進められています。
本年4月以降、今秋の総長選挙に向けて、R2020の後半期の立命館のあるべき姿や基本目標・基本政策を学園構成員が共有するために、R2020後半期(2016年度~2020年度)の基本政策を検討してきました。この検討は、R2020の一環ではありますが、2011年当時と比較すると社会の状況は大きく変化していることから、検討に際しては最近の社会の流れに留意しました。学園を取り巻く社会の大きな流れとしては、グローバル化が挙げられます。我々が当初考えていたよりもグローバル化は急速に進んでいます。このグローバル社会をリードしていくことのできる人の育成を議論の柱にしました。もう一つの流れとして、主体性を持って社会づくりに取り組むことのできる人の育成に対する社会からの要望の高まりがあります。これらのことに対応することができる教育と研究の仕組みづくりを後半期における基本政策の主軸として検討しました。

また、改めて私立総合学園として、多様な環境の中で学生・生徒・児童を育む教育を重視し、多様性から創造性、イノベーションを創出する学園を目指し「R2020後半期及び以降の基本政策」を提起しました。

R2020後半期及び以降において、立命館が育成する学生・生徒・児童像についてお聞かせください。

「主体的に行動することができ、かつ多文化協働のできる人」を育成したいと考えています。これからのグローバル社会においては、近隣の国と国はもとより、はるか遠い国や地域、様々な事情を抱えた複数の国・地域との関係に起因して起こる問題に対応することのできる人が求められています。このため立命館では、そういった複雑な問題に対して、主体的にその解決に取り組もうとする高い志やチャレンジ精神を有し、豊かな教養と確かな専門的素養を備えながら、立場の異なる人々とも互いに理解し、尊重し合い、協働することのできる人を育てたいと考えています。特に、地理的にも歴史的にも日本との関係が深く、国間に数多くの課題を抱えるアジアを中心としたグローバル社会で、課題に対する解決に向けて協働して創造性を発揮することのできる人の育成は社会からも求められており、この課題に積極的に取り組んでいきたいと考えています。

また、立命館で学ぶ全ての学生・生徒・児童の皆さんに、語学力や多文化理解力などグローバル社会に対応するために必要な最低限の素養を身につけてもらうことを目指しています。相手と直接会話する中で相手を理解し、自分の意思を伝えようとする姿勢が多文化理解にもつながり、そのための手段としての語学力の習得が必要になっています。

そういった人を育成するには何が必要でしょうか。

キーワードは「多様性のある環境」だと考えています。なぜ多様性が大切かというと、人は往々にして相対的に物事を評価し、判断します。全く同じ文化、習慣を持った集団の中にいると自分というものを意識しにくいのではないでしょうか。逆に自分と異なる考えや立場の違う人がいる環境に置かれると、自分の周りには多様な人がいることを知ることができ、同時に自分をより深く知ることができます。様々な他者との違いや距離感を感じることで、自分の立場をより深く知り、相手への理解も深まります。そして、自分と異なるものがあるということを認め、刺激や影響を受けることが、新しい何かを生み出そうという発想につながります。同じような考えを持った集団からはイノベーションは生まれにくく、多様性こそが、イノベーションの原点だと思います。

もう一つの重要なことが、「主体的な学びの場の創出」です。現在の日本のように社会が成熟してくると、社会の大きな成長が見込めなくなってきます。こういった時代には新しい流れを創ることができる人が求められます。今を当たり前とせず、より良い未来を想像し新しい何かを生み出していこうとする能動的な姿勢を持ち、主体的に行動できる人です。そうした主体的な姿勢を身につけるための場や機会とともに、学生・生徒・児童の皆さんが持っている興味・関心に対して背中を押しチャレンジを促す仕組みを創出していきたいと思っています。前半期に積極的に取り組まれた成長支援型奨学金・助成金制度はその一例です。やりたいことを自分でまとめ、奨学金に申請することで動き出す。これまで、こんなことをしてみたいと考えるだけで終わっていたことに対して一歩踏み出す機会を作り出すこと、それが主体的な学びを生み出していくのです。

また、主体的な学びを充実させるために、これまでGPAで評価してきた「専門的素養」に加え、「Borderを超えて主体的に学ぶ力」を評価し、両者をバランスよく伸ばしていくことを目指しています。この「Borderを超えて主体的に学ぶ力」は、短期間で身につくものではありません。大学4年間のカリキュラムの中でしっかりと身につくような仕組みを構築していきたいと考えています。

研究政策、大学院改革についてはいかがでしょうか。

立命館の国際的ステータスを高めるためには、研究は非常に重要です。後半期に向けては、総合学園の利点を活かし、世界が抱える課題に対して分野のBorderを超えた研究を積極的に展開します。また、アジア中心の未来創造に貢献する学術研究分野の構築を目指し、「立命館グローバル・アジア研究機構(仮称)」、「立命館アジア・日本研究所(仮称)」の設置を進めていきます。

そして、研究活動の高度化のために、グローバル化と大学院改革にも取り組んでいきます。海外の大学との交流という点では、研究交流が最も行いやすく、また効果的です。海外の大学・研究機関と研究交流を進め、その一環として研究者の受け入れや送り出しを行い、立命館における研究のさらなる活性化を推進させたいと思っています。大学院は研究の一翼を担っていますので、大学院改革を推進し、充実を図っていくことは研究の高度化にも不可欠です。また、学部の教育も時代に合わせて変えていかなければならず、最新の情報を取り入れ更新していかなければなりません。研究の成果を学部の教育にフィードバックし学部教育を高めていく、そういった教育・研究の循環のためにも大学院の位置づけは非常に重要です。研究の高度化、学部教学の高度化の貢献のためにも、大学院の発展に取り組んでいきたいと思います。

総合学園として目指すべき姿について

立命館アジア太平洋大学(APU)はグローバル大学という点で日本の最先端を走っており、各附属校でも特色ある教育が進められています。今後は、総合学園であることの利点を最大限に活かし、小・中・高・大・院の立命館らしい一貫教育を構築し、立命館大学、APU、各附属校が、既存の枠を超えて連携を進めることができればと考えています。教育、研究分野にとどまらず、文化芸術活動やスポーツ分野など課外含めた連携を進め、学園全体の新しい形を作り出していきたいと考えています。

「R2020後半期及び以降の基本政策」の具体化を進めるために

今回定めた基本政策は、2020年とそれ以降の学園が目指すべき大きな方向性です。この方向性を踏まえながら、今後、教職員、学生をはじめとしたそれぞれの関係部署と丁寧に議論し、具体的な施策や各現場で何をしたら良いかを考えていただくことになります。今後、学園全体で議論を進め、その結果を計画要綱として取りまとめ、基本政策の具体化を推進していきたいと考えています。