未来への種まき

For sustainable growth

循環型社会に必要なシステムとは

立命館大学
中村 真悟教授
経営学部

ペットボトルの水平リサイクルに学ぶ

  ゴール#12「つくる責任 つかう責任」

私は製造業におけるデジタライゼーションについて研究しています。情報化、機械化、自動化などによって大量生産が可能になった一方で、当然ながら廃棄物も大量に発生しています。近年ではこの廃棄物の問題に注目し、資源循環をキーワードに研究に取り組んでいます。主に化学産業を対象としていて、ペットボトルなどの製品を資源として循環し循環型の社会を実現するためには、どのようなシステムが必要なのかを探っています。


 リサイクル製品というのはダウングレードしていくのが一般的です。例えば、自動車のバンパーは内装材としてリサイクルされ、その次は運搬用パレット、その次は廃棄といった道をたどります。しかし、私が研究を進める中で出会ったあるリサイクル企業は、ペットボトルからペットボトルを作る水平リサイクルに取り組んでおり、これが日本の大手飲料メーカーにも採用されるなどビジネスとして成立しています。実はペットボトルは大量生産の論理で、石油から新規生産した方が、輸送費や人件費が膨大なリサイクルで作るよりもコストが抑えられます。さらに、何かトラブルがあった時に責任を取るのはリサイクル企業ではなく、飲料メーカー側です。にもかかわらず、なぜ水平リサイクルに成功した企業が現れたのか、このシステムは今後も成立するのか、そして、これが日本の「ガラパゴス市場」だけで通用するシステムなのか、それともグローバルスタンダードになる可能性を秘めているのかなど、様々な角度から研究を進めています。

実践的に学ぶ学生たちに期待

【sdgs/interview】20240214 nakamuraseminar
左から三木旭さん(経営学部4回生)、Shin Dongjuさん(同4回生)、
中村先生、長岡陽彩さん(同2回生)、下里青海さん(同4回生)※所属・回生は取材当時

中村先生:大阪いばらきキャンパスでは、有志の学生団体がこのペットボトルの水平リサイクルの普及に取り組んでいます。他にも資源循環の実践に挑戦する学生がいるので、実際に本人たちから活動内容を紹介してもらいましょう。


三木さん:私は「Bottle To Bottle(ボトルトゥボトル)」という学生団体で、「立命館大学を起点に資源循環の和を広げる」という理念のもと活動しています。大阪いばらきキャンパスには中村先生が研究する企業のペットボトル回収機が設置されているので、まずはこれを学生や教職員の皆様に知ってもらうための普及活動に取り組んでいます。回収したペットボトルを水平リサイクルするためには、キャップ、ラベル、飲み残しなどがないことが条件なので、より多くの人が協力してくださるよう呼びかけています。また、この大阪いばらきキャンパスの取り組みを茨木市や地域社会に広めるために、茨木フェスティバルなど地域のイベントに出展して啓発活動に取り組んでいます。


下里さん:私たち「Rits CLO」は、「アパレルの資源循環とサステナブルファッションの促進」を活動テーマにしています。大阪いばらきキャンパスに古着の回収ボックスを設置して、集まった古着はリサイクル工場に届けています。また、持続可能で魅力的なファッションこそが本当の意味でのおしゃれであり、それを積極的に選択する人が増えるよう、啓発活動にも取り組んでいます。


Shinさん:私は韓国出身で、中村先生のゼミではSDGsCSRに関心を持って学んでいます。アパレル系企業への就職が内定したので、この「Rits CLO」の活動が見識を広げる絶好の機会だと思って参加しています。


長岡さん:私はまだ2回生なので中村先生のゼミには参加していないのですが、「Rits CLO」の活動理念に魅力を感じて参加しました。服をきっかけに持続可能な社会の実現に向けて自分ができることを考えています。


中村先生:リサイクルは地道な作業が多く、「Bottle To Bottle」で三木さんはペットボトルのラベルを延々と剥がしたり、「Rits CLO」の学生は工場で古着の仕分けをしたり、手間のかかる面倒な作業も身をもって体験しています。もちろん、そこで終わりではなくて、この面倒ごとを解消するためにはどのようなシステムが必要なのか、新しい解決策を見つけ出すことが、若い世代である学生たちに期待されていることです。

廃棄の先を想像してほしい

 私は常々、資源循環は手放す人で決まると思っています。効率だけを考えるなら、ペットボトルもそのまま捨てる方が手っ取り早いかもしれません。しかし、その先にあるのは大量生産、大量廃棄であり、たとえ大量にリサイクルをしたとしても、高エネルギーを要する社会で、持続可能な発展を続けることはできません。誰かが面倒ごとを引き受けなければならないのですが、ペットボトルのラベルを剥がしたり、飲み切ったりすることが、果たしてそれほどまでに面倒なことなのでしょうか。
 ぜひ多くの人にペットボトルや古着を手放した先でいったい何が起きているのか、想像力を働かせてほしいと思います。ほんの少し視野を広げるだけで、一人ひとりの行動は大きく変わってくるのではないでしょうか。

▶ Bottle To Bottle の活動詳細はこちらから
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