Interview 教育・研究の質向上をめざして
「未来をつくる R2020 立命館学園の基本計画」の完成と、これからの学園づくり 「未来をつくるR2020立命館学園の基本計画」で掲げられている「立命館大学キャンパス創造」の実現に向け、現在、京都(衣笠キャンパス・朱雀キャンパス)、BKC、大阪茨木のキャンパス創造、キャンパス整備計画の議論が進んでいます。現在の議論状況と今後の課題について、キャンパス創造、キャンパス計画両委員会を代表するお二人に語っていただきました。
服部健二

服部健二(はっとり けんじ)
学校法人立命館副理事長

キャンパス計画委員会 委員長

見上崇洋

見上崇洋(みかみ たかひろ)
学校法人立命館副総長

キャンパス創造委員会 副委員長

まずお二方が各々まとめられているキャンパス創造委員会、およびキャンパス計画委員会について、それぞれの役割をご説明ください。

見上
「R2020」の柱の一つとして、「立命館大学キャンパス創造」が進められていることは、みなさんご承知の通りです。これまで常任理事会で、その基本構想が検討されてきました。キャンパス創造委員会では、常任理事会で確認された内容に基づき、キャンパス創造の理念や新キャンパス展開のコンセプトを、既存の京都キャンパス(衣笠・朱雀キャンパス)とBKC、そして大阪茨木市にできる新しいキャンパスそれぞれについて、ハード・ソフト両面から包括的に検討しています。全学部長が参加し、まさに全学体制で議論しています。
服部
キャンパス創造委員会で決定された包括的なアイデアを実現するべく、具体的な整備計画を策定するのが、キャンパス計画委員会の役割です。いくつかのワーキンググループに分かれ、キャンパス創造委員会で抽出された課題を解決するための実行プランや予算を検討し、キャンパス整備計画を練っています
見上
「キャンパス創造」のめざすところは、「教育・研究の質の向上」です。昨年10月に確認された7つの重点課題をみてください。新しいキャンパスは、2020年に向けて進められている学部・研究科の教学展開を実現し、学生生活の充実や教育・研究の質の向上を支えるものでなくてはなりません。キャンパス創造委員会でも、そうした観点から3キャンパスの課題を考えてきました。2011年度末、ようやく課題が固まり、確かな方向性が見えてきたところです。
服部
それまでキャンパス創造委員会とキャンパス計画委員会は、互いに連携をとりながらも別々に検討会を開いてきましたが、本格的な実践に向けて、2012年になってからは合同で会議を開き、さらに具体的な計画に踏み込んでいます。

3つのキャンパスについて、検討されている課題とは? まずは衣笠キャンパスからお聞かせください。

見上
衣笠キャンパスにおいては、新しい教学展開として、2012年度の文学部教学改革があり、さらに産業社会学部の再編の議論が進んでおり、それと並行して、人間系新学部・研究科の創設を検討しています。加えて2015年には、政策科学部・研究科が新設される大阪茨木新キャンパスへ移転することが決定しているので、その跡地利用も検討課題です。ハード面については、敷地、建物のいずれもかなり不足しており、空間の拡充が最優先課題です。教室や教員研究室が狭く、屋内外にゆとりのスペースも少ない。その上、「教育の質の向上」の一環として、教員の増員を計画しているため、教員研究室が足りなくなることは目に見えています。そこでキャンパス東側の日本通運社員寮が建っている土地を購入し、キャンパスの拡充を図ることになりました。
服部
具体的な計画としては、日本通運社員寮跡地に新棟を建設し、既存施設を移設することでキャンパス内に教室等を創出しようと考えています。他の計画に先行して来年度に着工し、2014年の完成をめざします。新棟の中身については、今後、より具体的に議論していく必要があるでしょう。また新棟建設と同じく先んじて着手しているのが、図書館の新設です。新体育館完成後に、現・第一体育館の跡地を活用し、新たに図書館を建てる計画で、現在、予算配分や設計・施工会社の選定を進めているところです。
見上
先行案件を進めながらも忘れてはならないのが、単なる建物の移転や新設にとどまらない包括的な視点です。私たちは、「キャンパス創造」に向け、衣笠キャンパス全体のデザインを見直す必要があると考えています。これまでのキャンパス整備は、その時々で要望や課題が持ち上がるたびに局所的に対処され、キャンパス全体を包括する視点はおろそかにされがちでした。そうした反省も踏まえ、キャンパス創造委員会では、この機に、正門のあり方や学生の行動を考えたキャンパスの軸線、憩いや居場所のスペースの必要性などを今一度検討し、キャンパス全体の「概括デザイン」を描き直すべく、議論しています。

BKCについては、どのような課題が検討されていますか?

見上
BKCではまず大きな変化として、経営学部・研究科が大阪茨木新キャンパスに移転することが決まっています。キャンパス整備については、その後のBKCの教学展開と合わせて考えていかねばなりません。
服部
具体的な課題としては、衣笠キャンパスと同様、以前から建物や教員研究室、教室の不足が指摘されてきました。自然科学系学部が次々と発展する中で、学部ごとのゾーニングもあいまいになっています。キャンパス整備にあたっては、教育・研究環境・アメニティを向上させるゾーニングを再検討する必要があるでしょう。
見上
経営学部・研究科移転後の懸案の一つは、学生が減少することです。学生にとって魅力あるキャンパスにするにはどうすべきか、思案のしどころです。その一つの方策が、「R2020」でも重要課題として挙げられている、「学生の居場所をつくる」ことです。とりわけBKCは、京都のキャンパスと比べて学生の長時間滞在が顕著です。そのため、学生が憩い、自分の居場所を見つけられる場所、すなわち「コモンズ」をつくる重要性が議論されています。
服部
学生にとって居心地の良いキャンパスをつくる一案として進めているのが、キャンパスの緑化です。BKCの土壌は、粘土質になっているため、キャンパス内の樹木も思うように育っていません。そこで排水に工夫したり、かつて造成時に埋めた水の流れを一部復活させたりして、緑豊かなキャンパスへと生まれ変わらせようと計画しています。こうした緑地整備と連動させながら、キャンパス空間全体を見わたして、学生の学問的、人間的成長を促すような動線を再考し、建物の再配置や新設の計画を練っています。

大阪茨木新キャンパスについてはいかがでしょうか。

見上
大阪茨木新キャンパスには、政策科学部、経営学部が移転することが決まっていますが、さらに新たな教学展開を検討中です。一つには、大阪という立地を活かし、社会人や地域の方々が集まる開かれたキャンパスとして特徴づけたいと考えています。そのため政策科学研究科、経営学研究科、テクノロジー・マネジメント研究科のほか、経営管理研究科といった専門職大学院を大阪茨木新キャンパスに集中させる計画です。こうした教学計画に合わせてキャンパスづくりを進めています。

キャンパス整備計画を具体化していくにあたって、教職員のみなさんには何を期待されていますか?

見上
各学部の建物においては、やはり現場の専門的な視点が不可欠です。それぞれの現場で欠かしてはならない要素を浮き彫りにし、広く意見を聴いています。
服部
キャンパス計画委員会としては、そうした要望を実現するために予算配分を考えたり、実現の可否を検討する必要があります。たとえば、新しい建物では、以前より教員研究室や事務室等が広くなるはずという期待が当然あるでしょう。しかし現実には、既存の施設を作り替えるだけでなく、ラーニングコモンズや新学部などの創造に向け、これまでにない施設の建設や整備も計画に盛り込まれています。個々の要望の実現より、それらが優先される場合もあり得ます。
見上
「キャンパス創造」が、単なる「引越し」に終わってしまっては、意味がありません。大切な学費を投資するにふさわしい発展を遂げなければならないと考えています。そのためには、判断基準となる「ものさし」を明確にし、教職員全員が共有する必要があります。最も重要な「ものさし」は、「学生の成長」、「教育・研究の質の向上」につながるかどうかです。学生の成長、教育・研究の質の向上を支えるためのキャンパス整備や施設の充実を考え、アイデアを出していただきたいです。
服部
教学改革に取り組む学部だけでなく、これを機に、すべての学部で、将来を見すえ、教育と研究の質を高めるためにどう改革をしていくべきかを議論していただくことも必要ではないでしょうか。職員のみなさんにも同じことをお願いしたい。大阪茨木新キャンパスへの移転と時期を同じくして職員の組織・機構改革も行う予定です。職員の立場で、学生の成長を支えるにはどのような組織体系がふさわしいのか、どんな機構をつくり上げていくべきなのか、議論を重ね、提案していただけたらと期待しています。
見上
全教職員の理解と納得がなければ、キャンパス整備を進めることはできません。そのためには、情報共有が不可欠です。今後は、これまで以上に積極的に情報を公開・発信し、全学の教職員のみなさんとの相互理解を深めていきたいと考えています。
対談風景