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02.27

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2024

佐野ゼミにおける海外フィールドワーク ~カンボジアでのマングローブ植林活動と日系企業訪問の報告~

240227sanozemi 2マングローブ植林活動の参加者らとともに写真撮影

1.フィールドワーク参加を決めた動機
動機の一つは、カンボジアでの研修の説明を受けたときに、マングローブ植林活動の話を聞き、ゼミ活動のテーマの一つである都市農村交流とのつながりを感じたことです。佐野ゼミでは滋賀県の鵜川や走井という地域で地元の方々と共に地方創生活動をおこなっており、棚田を有効活用して地域活性化を推進する活動をしています。カンボジアでもマングローブという何か1つのことをきっかけに地域を活気づけようとしているところに共通点を感じ、訪問することで今後のゼミ研究にも役立つのではないかと考えました。また、今までにない刺激や新たな価値観を得たりすることのできる「非日常」の空間に強い興味を持っていたこともあり、今回の研修の参加を決めました。この研修では、現地での生活やカンボジアの経済発展の様子、現地の方との交流などを通して未知の世界を肌で感じることができると確信しました。

2.マングローブ植林活動について
①マングローブ植林活動の背景と目的
カンポットの町から約30キロの流域に沿ったイスラム系のコミュニティ(TFC)で活動を行いました。活動の背景として、この地域では周辺地域の河岸開発による生態系の悪化などを理由に主収入の漁業での生計が立たず、多くの若者がコミュニティを離れ、出稼ぎに行くといった問題にありました。そこで魚の生息域で、水の生態系を豊かにする役割を持つ、マングローブ林の保全が実施されました。現在までに30万本以上のマングローブが植えられ、その結果、漁業の水揚げ量は大幅に増加しました。出稼ぎに行くことなく生計を立てられるようになったため、コミュニティを離れる人が80%減少しました。さらに、収入が増えたことで家畜を飼うことが可能となり、生活はさらに豊かになりました。現在は主にカンボジアの人々が訪れる場所になっており、そうしたエコツーリズムからの収入も増えています。得られた収入は、コミュニティ内の高齢者や未亡人のサポート、子供の教育支援等へ優先的に使われています。このように、マングローブ植林活動は、地域内の所得上昇と環境保護へとつながっており、また環境教育の場へともなっていました。

②活動内容
活動は地域の住民や他国の参加者らとともに行いました。まず、活動はマングローブの種を採取するところから始まりました。マングローブの種は、木の高いところに垂れ下がっており、木に登り採取をおこないました。種はその状態で植えることはできず、まず容器に植えて、ある程度の大きさまで育てなければなりません。ある程度まで育った苗をマングローブ林に植えます。マングローブは根が大きいので約2メートルの間隔で植える必要があります。マングローブを植える土壌は非常に柔らかく、足がとられるので大変な作業でした。

240227sanozemi 3マングローブの種

240227sanozemi 4マングローブの種を採取する様子

240227sanozemi 5マングローブの苗を植える様子

240227sanozemi 6植林を行った仲間たち

3.日系企業訪問について
日系企業の進出の経緯、ビジネスモデル、現地の実際の職場の様子などの調査を通し、自身のキャリアデザインの構築を目的として企業訪問を行いました。
日本市場向けのジーンズを製造しているCAITAC A&Wとトヨタ関連のエンブレムの生産を中心としながら建材生産も行っている丸三金属を訪問しました。
CAITAC A&Wでは工場見学をさせていただきました。同工場では、アパレルメーカーやイオン・イトーヨーカ堂等からの委託生産で製造しているジーンズの生産現場を見学させていただきました。また、同工場でのSDGsに関する取り組みなどについてもお話を伺いました。工場では加工段階で発がん性物質を含む科学的な加工を行わないことやジーンズの洗浄水を自社内で再利用できるシステムを導入するなど、環境に配慮した生産活動を実施しています。一方、生産工程で生じる切れ端やB品等の廃棄を減らしていくのも課題となっていました。環境に対する意識がまだまだ低い日本人は、相対的に価格が高くなると環境に配慮しているからといって、そのジーンズを選択しない傾向があります。そのため、費用対効果が低くなり、環境に配慮しているということが付加価値の形成につながっていないようです。個々の環境への意識の低さがこのように影響を及ぼしているとは思っていませんでした。
丸三金属でも同様に工場見学と工場長のお話を伺いました。この工場ではトヨタ関連のエンブレムの生産が行われていました。人件費を日本の10分の1に抑えられる点や材料の輸出入に関税がかからない点でメリットがあり、2013年よりカンボジアのプノンペン経済特区(PPSEZ)へ進出しました。その一方で、原油高や戦争による世界情勢の影響を大きく受けるなどのデメリットもあります。このように企業訪問では、日本企業の取り組みについて多くのことを学ぶとともに、また海外での駐在という仕事についての理解が深まりました。

240227sanozemi 7CAITACでの工場見学

240227sanozemi 8丸三金属の工場前で記念写真

4.生活(授業・実習以外の様子)

【滞在先について】
TFC
のコミュニティ内にあるバンガローとプノンペン市内の日本人向けのホテルにそれぞれ3泊ずつ滞在しました。バンガローでは、通気性の良い作りになっているゆえに、蚊や蛙、ゴキブリなどが室内に侵入することもあり、快適とは言えない滞在となりました。とはいえ、現地の人々と同じような生活空間で滞在できたことは勉強になりました。一方、プノンペンのホテルでは日本のホテルと遜色なく十分な設備が整っており、不自由のない滞在となりました。

240227sanozemi 9(左)コミュニティ内のバンガロー (右)プノンペン市内のホテル

【衣服について】
気温は30度を超え、非常に湿度も高いため、半そで、短パンで活動することが多かったです。また太陽の日差しが強いうえに、マングローブの種の採取や苗植えの作業は川で行うことから、水面からの照り返しもあるため、日焼け止めや帽子、サングラスは必須です。

【食事について】
滞在中のバンガローでは、地元のカンボジアの方と共に料理を楽しみました。カンボジア料理は独特な香辛料が多く使用され、学生の中でも好みが分かれるものが多くありました。地元の屋台では、孵化直前のアヒルの卵を茹でた「ポーンティアコーン」と呼ばれるカンボジアのソウルフードを食しました。最初は躊躇しましたが、カンボジアの食文化を体験するために挑戦してみると、美味しくいただくことができました。

240227sanozemi 10(左)現地の方とともに作ったカンボジア料理 (右)屋台のサトウキビジュース

5.現地での交流の状況
現地では主に英語を使用してコミュニケーションをとりました。マングローブ植林のボランティア活動には、カンボジア人だけでなく、インドネシア、ミャンマー、ベルギー、イタリア、オランダ、フランスなど、多岐にわたる国籍の参加者がいました。参加者の母国語が英語でないことから、ゆっくりと発音したり、ジェスチャーを交えたり、適切な表現に言いかえたりするなどの工夫を凝らしてコミュニケーションをとりました。これまで海外の方との交流がほとんどなかったため、最初は不安を感じていましたが、相手に伝えたい気持ちがあれば、相手も理解しようとしてくれることを実際に感じました。様々な国籍の人々との交流を通じて、日本との価値観の違いなどを深く理解することができました。その一方で、自身の英語スキルが限られていたため、相手の意図が理解できなかったり、自分の思いを正確に伝えられなかったりしたことにもどかしさを感じ、その点で悔いが残る経験となりました。

240227sanozemi 11カンポット近郊にある塩田見学

6.フィールドワークを通して学んだこと
フィールドを通して学んだことは主に2つあります。
1に、多様な価値観を吸収できたことです。現地での暮らしや異なる国籍の人々との交流を通して自分の中にあった常識が世界では全く通用しないということを強く感じました。またその経験は、私が、いかに狭い世界で生きてきたかを教えてくれる素晴らしい機会となりました。百聞は一見に如かずという言葉にある通り、価値観を理解するには、情報だけでなく、現地に行って肌で感じることが重要であることがわかりました。
2に、言語を習得するということは新たな価値観を得るための手立てとなるということです。私はこのフィールドワークで多様なバックグラウンドを持った外国人の方と英語でコミュニケーションをとることができました。これまで外国の方と深く関わる経験がなかったので、彼らとともに生活し、日常的に会話を交わす環境はとても刺激的でした。ジェスチャーを用いて基本的なコミュニケーションはできましたが、専門的で深い内容の会話おいて、相手の意図が理解できないことや、自分の考えをジェスチャーだけではうまく伝えられないことが多々あり、その中で悔しい思いをしました。しかし、同時に、もっと高い英語スキルがあれば様々な国の人々とコミュニケーションを円滑に行うことができ、視野を広げることができると痛感しました。今回の異文化交流で強く感じた悔しさを原動力として、英語スキルの向上を目指していきます。

7.後輩へのメッセージ・アドバイス
何か興味をもったことには恐れずに挑戦することが大切です。やる後悔よりやらぬ後悔です。特に海外への研修は社会人になる前に、自分の視野を広げる大きなきっかけとなるはずです。農業に少しでも興味のある人、新しいことに挑戦してみたい人、自分の価値観を広げたい人、佐野ゼミに入ることを強くお勧めします。

  経済学部 佐野ゼミ 2回生 笹枝岳人

 

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