教育内容 #02:キャリア教育科目

「いかに生きるか」
を考えるキャリア教育

社会で求められる能力を自覚し、
4年間の学びに生かす

大学を卒業した後、どのような道へ進むのか? 大学に入学したばかりの1回生には想像もできないかもしれません。初年次から実社会に触れ、社会で求められる能力や自分に足りないものを自覚することで、大学生活は大きく変わります。「自らの人生をいかに生きるか」を考え抜き、それを実現するために必要な力を磨く。それが4年後、希望の進路を切り開くことにつながります。そうした一人ひとりの成長を後押しするのが「キャリア教育科目」です。
このサイトでは、実社会の課題解決にチームで取り組む「社会と学ぶ課題解決」と「コーオプ演習」をピックアップし、科目の特長とともに、両科目をキャリア形成につなげている受講生の声をご紹介します。

全学型キャリア教育科目の体系

全学部横断型の教養教育の一つに位置づけられる「キャリア教育」。1回生から4回生のキャリア発達段階に合わせてさまざまな「キャリア教育科目」を開講しています。学生は講義と演習の両輪で学びを深め、4年間を通じて「いかに生きるか、いかに働くか」を考察していきます。中でも特長の一つが、1回生から実社会に触れる機会があること。「社会と学ぶ課題解決」では、企業の第一線の方々が教室に来て下さり、チームで課題解決に取り組みます。オンキャンパスで体験できる新しい時代のインターンシップでもあります。

履修モデル

キャリア形成は1回生から。
実社会に触れながら将来を考える。

1回生受講科目

社会と学ぶ課題解決

1回生の春、入学したばかりの学生たちを対象に、キャリア教育科目の一つ「社会と学ぶ課題解決」の授業は始まります。演習では、企業から提示されるビジネスの現場の実際の課題にチームで取り組みます。求められるのは、各部署に勤める社員の立場になって考えること。単なる思いつきのアイデアや実現不可能な解決策は認められません。「自分事」として現実的な解決策を目指すところに、この演習のおもしろさ、難しさがあります。課題をいただき約1ヵ月の間に、各チームは一次提案・最終提案をまとめ、企業の方々を前にプレゼンテーションを行います。

企業から提示された課題(過年度)

メーカー
メーカーの社員として自社の製品で世の中の社会問題を解決せよ!
証券会社
証券会社の社員として、より良い社会を実現するために魅力的と考える投資対象を決め、その根拠も示しなさい
陸運会社
XX沿線の賑わい創造を検討・実施していく活性化チームのメンバーとして、XXXエリアへの旅客誘致の強化を図るため、話題性が高く、同エリアの賑わい創出につながる施策を提案せよ
半導体・電子部品メーカー
メーカーの社員としてガス測定分野の新製品を開発せよ
保険会社
新商品を企画するプロジェクトメンバーとして、ニューリスク・マーケットへの新たな取り組みを考案せよ
食品メーカー
フードサプライ営業部として、中食・外食産業へ向け、新しい食のトレンドを創造するような、かつ利益拡大につながる企画を提案せよ

課題の解決にたどり着くためにまず何をすればいいのか。そこから考えるところが高校までのPBLと違うところです

中川洋子教授 キャリア教育センター

学生たちはチームで意見を出し合い、店頭調査やアンケート調査を行ったり、企業へのインタビューを行ったり、手探りで情報収集を進めます。もちろん最初から的確な方法で必要な情報を入手できるわけではありません。2週間後の一次提案では、企業の方からさまざまな指摘を受けます。

「新商品の価格はいくらを想定し、どこで販売するつもりですか? 売れるという根拠は?」
「投資先としてなぜ同じ業界・業種の中でも〇〇会社を選択したのですか? なぜ△△会社ではないのですか?」
社員の方から指摘され、学生たちは市場調査をしたり、各銘柄を比較・分析する必要性に初めて気づきます。

与えられた課題を解決するためにどうしたらいいのかを考え、チームで協力し、試行錯誤を繰り返しながら解決策に迫っていく。その過程で鍛えられる論理的思考力は、社会人としてはもちろん、大学での学びや研究活動にも不可欠です。

企業の方々の前で発表した経験によって、プレゼンや面接の時に緊張することが減ったように思います。グループワークでやりがちな失敗もみんなで体験して乗り越えました。

グループワークで出た話をひとつひとつ要約し全員に理解できるよう伝えてくれたメンバーがいました。議論で出た意見を要約することは、全員で情報を共有するために非常に効果的であるとわかりました。優れたアイデアを提案するには、グループワークの「進め方」が重要になる、と思うようになりました。

1回生で体験するインターンシップ。
自分に足りないものを自覚することで
4年間の過ごし方が変わる。

この科目のもう一つの重要な特長は、学部横断型であることです。学生たちは文系・理系を問わずさまざまな学部の学生とチームを組み、課題に取り組みます。「多様性が高いパフォーマンスを生むことも体験してほしいと考えています」と中川教授。

多様な学生が集まると、経済学部の学生が市場分析をしたり、データ収集は情報理工学部の学生が担当したりと、自然と役割を分担するようになります。

さまざまな専門分野を学ぶ学生と交わる中で自分の強みを自覚するとともに、他の分野から何を期待されているのかにも思い至ります。そこから「自分の強みを発揮してチームに貢献するには専門性を磨く必要がある」という意識が芽生えるのです。

「自分に足りないもの、社会で求められる能力に気づくことができれば、それから4年間の学びは非常に有意義なものになるはずです」と中川教授は狙いを語ります。ただ漫然と4年間を過ごすのではなく、目的意識をもって大きく成長を遂げるための最初の一歩が、この「社会と学ぶ課題解決」なのです。

1回目のプレゼンで提案した新製品の通信方法についての質問が連携企業からありました。次の最終プレゼンでこれに回答するため、情報理工学部のネットワーク系の研究室の方々にお話をうかがうことで、通信方法についての知識を得てこの問題の解決を試みました。キャリア教育科目を通して自分の専門分野の知識も広がるとは思ってもいなかったので驚きました。

半年間をかけて
企業が抱える課題の解決に挑む
プロジェクト型インターンシップ。

2〜4回生受講科目

コーオプ演習

「社会と学ぶ課題解決」に続くステップとして、2回生では長期にわたるプロジェクト型インターンシップ「コーオプ演習(実践)」に挑戦します。オンキャンパスで行われた「社会と学ぶ課題解決」とは異なり、「コーオプ演習(実践)」は5~8人のチームを組み、実際に企業に赴いて企業が現実に抱える課題の解決に取り組みます。半年間もの長期に及ぶプログラムであることが、企業が提供するインターンシップとも大きく異なるところです。

「課題が与えられたら、その後、どうするかはすべて学生たちに委ねられます。インターンシップ先の企業での業務を体験したり、社員の方から話を聞いたりして企業の業態や特徴をつかみ、それを踏まえて自分たちだけで課題解決を目指します」と中川教授。

「コーオプ演習(実践)」では、現実の仕事の単位で課題が学生に委ねられ、一定の成果が求められるため、学生たちの取り組む姿勢もいっそう真剣なものになります。

企業から提示された課題(過年度)

民放FMラジオ局
受信地域を超え、全国に当ラジオ局のファンを創り増やす方法を提案せよ
酒造メーカー
マーケティングの基本フレーム(STP・4P)を使って、日本酒の新規顧客開拓を目的としたマーケティング戦略を立案せよ
製薬メーカー
あったらいいなを形にする、新製品アイデアを創造せよ
金属部品メーカー
農家さんの農業生活がより豊かになるためのプロジェクト&Eコマースを企画せよ
信用金庫
・情報技術(ICT)を活用した新たな金融サービス・商品を提案せよ
・大学生自信が地域社会の課題を解決するプラットフォームの構築とこの金融機関との関りを提案せよ

半年間もの長期間で連携企業と一緒にプロジェクトができる、これはなかなか体験できません。専門科目との両立を考えたら、長期インターンシップよりも無理なく取り組めると思い、受講を決めました。

『コーオプ演習』は決して就職活動に直結するものではありません。これから先どのように社会に貢献していくか、いかに生きるか、いかに働くかを考え、それを実現するための力をつける機会なのです

中川洋子教授 キャリア教育センター

変化し続ける社会の中で重要なのは、どんな進路を選んでも学び続け、成長し続けること。そんな生涯にわたって学び続ける意義とおもしろさを実感できるのが、キャリア教育の醍醐味です。

「日本酒の新規顧客開拓を目的としたマーケティング戦略を立案せよ」という酒造メーカーの課題に取り組んだチーム。新しい消費者を開拓するために、まず日本酒がよく飲まれる居酒屋について利用状況を調査しました。その結果見えてきたのは、20歳代の若い世代は長時間居酒屋で過ごすことを本当は好まないという実態でした。つまりふつうの居酒屋に売り込んでも新たな消費者を獲得することはできないという結論に至った学生たち。そこで若い世代がより短時間で日本酒を楽しめる店として立ち飲み居酒屋に注目。「若者でも気軽に入れて、ちょっとおしゃれな日本酒の立ち飲み居酒屋で新規顧客を開拓する」という最終提案をまとめました。

「社会と学ぶ課題解決」での経験を踏まえて「コーオプ演習」を受講したので、スムーズに課題に向かっていけました。「グループ全員が納得してこの提案をしていると伝わってきた」という点で評価を受けました。みんなで作り上げたものなので一番嬉しい言葉でした。