12月17日に大阪いばらきキャンパスで、「IMPACT MAKERS DAY」を開催しました。本イベントは、事業化を通じてイノベーションや社会共生価値の創出を目指す人(=IMPACT MAKER)が集い、新たな価値創造を促そうという試みです。立命館にゆかりある起業家や、IMPACT MAKERとして活躍する立命館の生徒・学生たちが登壇し、世代や立場を超えて交流した一日をレポートします。

起業家支援に取り組んできた立命館の挑戦

 立命館では、2019年度にビジネスを通じて社会課題を解決する人材「IMPACT MAKER」の育成を目指して「立命館・社会起業家支援プラットフォーム RIMIX」を開設。さらに2022年7月には世界6カ国11都市で活動するVenture Caféと連携して、関西地域におけるイノベーション・コミュニティの創出を目指した事業「OIC CONNÉCT」をはじめました。今回の「IMPACT MAKERS DAY」は、社会課題を解決する事業・ビジョンを持った人々が集まる場の形成をめざすOIC CONNÉCTの特別版として開催されたイベントとなります。

 舞台となったのは、大阪いばらきキャンパスにある分林記念館です。来場者たちはZone1〜4に分けられた各セクションで、IMPACT MAKERたちのピッチ(短いプレゼンテーション)や交流を楽しみました。

 Zone1では、事業化をめざす研究シーズやメタバースのワークショップを開催。海藻を荒らす食用に向かない魚をドッグフードに加工することで海の環境保全をめざすプロジェクトや、曲がりくねった細長い管内をリモートで探索できる検査ロボット、広島市などで実証実験が進むメタバース(VR仮想空間)を使用した不登校学生居場所支援プログラムなどが、ワークショップを交えながら紹介されていました。立命館の仲谷善雄総長、森島朋三理事長もメタバースのワークショップを体験し、これから到来するメタバース社会に強く関心を示していました。

多くの人でにぎわうZone1
多くの人でにぎわうZone1
VR仮想空間を体験する森島理事長
VR仮想空間を体験する森島理事長

 Zone3は「OIC CONNÉCT」の交流ゾーンとして、コーヒーや菓子が振る舞われる空間に。Venture Café Tokyoプログラムディレクター小村隆祐氏が軽快なトークでネットワーキング(異業種交流)の楽しみ方を紹介。来場者たちも小村氏の言葉に背中を押され、ドリンクを片手に会話をはじめます。イノベーションや新たな価値創造は、こうした自由な空気の中でこそ生まれるのかもしれない、そう感じさせる賑やかな空間が広がっていました。

Venture Café Tokyoプログラムディレクター小村氏
Venture Café Tokyoプログラムディレクター小村氏
Zone3では、さまざまな人が交流を楽しんだ
Zone3では、さまざまな人が交流を楽しんだ

小学生から大学院生まで、学生・生徒の IMPACT MAKERたちがピッチ

 Zone2で開催されていたのは、立命館小学生の児童、附属高校の生徒、立命館主催のビジネスコンテストで受賞した大学生や院生によるピッチです。

 まず立命館小学校6年生10名が、RIMIXの小学生アントレプレナーインターンシップを通じて見出した自身の研究テーマについて発表。「宇宙で活動できる生物を作る」「社会課題を解決できるモノづくりにつながる、新しい元素を作る」「視覚に障害がある人も楽しめる体感型ボードゲームを作る」などのアイデアについて、発想の背景、研究者や専門家を取材して得たヒント、どのようなゴールを描いているのか、などについて話してくれました。自作のスライドを操作しながら堂々と話す小学生に、来場者からは惜しみない拍手が送られました。

堂々とした小学生たちのピッチは来場者を驚かせた
堂々とした小学生たちのピッチは来場者を驚かせた
小学生にアドバイスとエールを送る仲谷総長
小学生にアドバイスとエールを送る仲谷総長

 附属高校生4名によるピッチでは、すでに起業している高校生COO・CEOの2名が、自社サービスであるITエンジニア特化型SNS「goodhub」や、個別最適・自立分散型の新しい教育の実現をめざす事業「NeiPia」について紹介。代替肉やVRカードゲームアプリの開発・起業をめざし準備中の2名とともに、それぞれの事業紹介したのち、「10年後にどんな自分になりたいか、どんな社会を作りたいか」をテーマにセッションしました。

 「高校生起業家というアドバンテージは大いに活かすべきだ」「起業した事業を副業として続けながら就職をしたい」など、従来の働き方にとらわれない彼らの発言は、オーディエンスを大いに刺激しました。大人顔負けのトークを繰り広げる彼らに「本当に高校生なの?」と驚きを隠せない大人たちも多かった様子。また食らいつくような眼差しで舞台を見つめる学生たちの様子も、印象に残りました。

 さらに、立命館が主催するビジネスコンテストで受賞した4名の大学生・院生が登壇。コンテストでは構想段階だった事業やサービスのその後などを紹介したのち、起業をめざす後輩たちに向けてアドバイスを行いました。こちらについては、後日改めて詳しい内容をレポートしますのでお楽しみに。

附属高校の学生4名によるセッション
附属高校の生徒4名によるセッション
大学生・院生によるセッション
大学生・院生によるセッション

これからの社会とビジネスの幸福な未来を考える

 Zone4では分林記念館に設けられた能舞台にて、イノベーションと日本文化を融合させた試みを発信。オープニングパフォーマンスとして、立命館大学 能楽部員たちが能仕舞を披露したのち、前半では、立命館の学生・卒業生・教職員の起業支援のために立ち上げられた「立命館ソーシャルインパクトファンド」が投資した3名×2組が登壇。それぞれの事業についてピッチしたのち、野池雅人氏(プラスソーシャルインベストメント株式会社 代表取締役社長)をモデレーターに迎え、起業の背景や事業の苦労話、立命館との連携などについてセッションを行いました。

 第一部はグローバルな課題解決に取り組む3名が登壇。

左/野池雅人氏。中央左/独自開発の微生物群「コムハム」で、焼却処理に頼らない新しい生ゴミ処理インフラ開拓を目指す、西山すの氏(株式会社 komham 代表取締役)。中央右/天然ゴムプランテーションからゴム製品だけでなくバイオディーゼル燃料を造ることで脱酸素社会や農場の経営維持への貢献を目指す、川谷光隆氏(Innovare 株式会社 代表取締役)。右/各家庭に水インフラを持たせるシステム開発で、既存の上下水道システムに頼らない水問題解決を目指す山田諒氏(WOTA株式会社 執行役員 兼 インキュベ
左/野池雅人氏。中央左/独自開発の微生物群「コムハム」で、焼却処理に頼らない新しい生ゴミ処理インフラ開拓を目指す、西山すの氏(株式会社 komham 代表取締役)。中央右/天然ゴムプランテーションからゴム製品だけでなくバイオディーゼル燃料を造ることで脱酸素社会や農場の経営維持への貢献を目指す、川谷光隆氏(Innovare 株式会社 代表取締役)。右/各家庭に水インフラを持たせるシステム開発で、既存の上下水道システムに頼らない水問題解決を目指す山田諒氏(WOTA株式会社 執行役員 兼 インキュベーション統括バイスプレジデント)

 第二部は地域コミュニティの課題に取り組む3名が登壇。

左/野池雅人氏。中央左/新たな価値のある日本酒開発で酒蔵の再生に取り組む三宅紘一郎氏 (ナオライ 株式会社 代表取締役)。中央右/発電機能のあるセンサーを使った一次産業の支援に取り組む矢島正一氏(株式会社 AmaterZ 代表取締役)。右/空き家を活用した多拠点生活ができるサービス運営で全国創成を目指す佐別当隆志氏(株式会社アドレス代表取締役社長)。
左/野池雅人氏。中央左/新たな価値のある日本酒開発で酒蔵の再生に取り組む三宅紘一郎氏 (ナオライ 株式会社 代表取締役)。中央右/発電機能のあるセンサーを使った一次産業の支援に取り組む矢島正一氏(株式会社 AmaterZ 代表取締役)。右/空き家を活用した多拠点生活ができるサービス運営で全国創成を目指す佐別当隆志氏(株式会社アドレス代表取締役社長)。

 後半は、立命館のRIMIXやOIC CONNÉCT事業と協力関係にある、伊井哲朗氏(コモンズ投信株式会社 代表取締役社長 兼 最高運用責任者)、藤田勝利氏(Venture Café TOKYO 戦略/パートナーシップ担当ディレクター、 PROJECT INITIATIVE 株式会社代表取締役/CEO)が、立命館の徳田昭雄副総長の司会のもとセッションを行いました。テーマは「これからの社会とビジネスの幸福なありかたとは~大学に何ができるのか」についてでした。

 藤田氏は、自身が米国ドラッカー経営大学院にて学んだ「マネジメントはリベラルアーツである」という言葉を引用し、経営学だけでなく心理学や哲学などさまざまな学問分野を俯瞰する視点が時代に求められていると指摘しました。伊井氏は、「これまでビジネスの世界ではリスクとリターンという短期集中の二元論で語られてきた。しかしこれからはそこに、社会的インパクト(社会の課題をどれだけ解決できるか)という長期的な視野が必要な軸として加わる。だからこそ長期的・俯瞰した視点で社会課題に取り組んできたアカデミアへの期待は大きい」と、ソーシャルアントレプレナーの育成に力を入れる立命館にエールを送りました。

徳田副総長、伊井氏、藤田氏(左から)
徳田副総長、伊井氏、藤田氏(左から)

 イベントの最後、森島理事長は閉幕の挨拶として「学校教育制度ができて150年。大学制度ができて100年。そろそろ教育現場は変革期を迎えている。大学教育を変えるアイデアのあるIMPACT MAKERは、理事長室の門戸を解放しているのでぜひ提案してほしい」と参加者たちを激励しました。さまざまな参加者がフラットな立場で話し合い、事業化に向けたアクションを促すことを目的に開催された「IMPACT MAKERS DAY」。立命館では、今後も社会を変えるために行動する方々を応援する、このような取り組みを推進していきます。

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