2024.04.25 TOPICS

薬学部生の卒業研究 国際科学雑誌「iScience」に掲載

 堀亜里沙さん(薬学部6回生、2023年度卒業)、豊浦早織さん(薬学部6回生、2023年度卒業)は、卒業研究で、MHC クラスI分子を身に纏った(ドレス化)樹状細胞による新しい細胞性免疫誘導メカニズムを発見しました。本研究成果は、2024年4月10日に国際科学雑誌「iScience」に掲載されました。

研究の背景

 ウイルス感染細胞やがん細胞の排除にはCD8陽性キラーT細胞が中心的な役割を担っています。しかしそのキラーT細胞の誘導メカニズムは複雑であり、未だに十分理解されていません。つまり、免疫応答の司令塔として働く樹状細胞ががん細胞などの異物を取り込み、それら異物抗原をMHC クラスI分子上に提示することによって、CD8陽性T細胞を活性化させることが重要ですが、その抗原提示メカニズムについて十分理解されていませんでした。

研究の内容

 マウス実験において、樹状細胞がどのように異物抗原をMHC クラスI分子上に提示するのかを調べました。その結果、樹状細胞は死んだ細胞からわずか数分でMHCクラスI分子を引き抜く(かじりとる)ことが明らかとなりました。このトロゴサイトーシスとよばれる現象を介したMHCクラスI分子ドレス化は、とりわけトル様受容体TLR3から刺激を受けた樹状細胞において顕著に起き、効率よくCD8陽性T細胞を活性化させることが明らかとなりました。

研究成果

 本研究で、樹状細胞がTLR3を介して二本鎖RNAを感知すると、死んだ細胞からMHCクラスI分子を引く抜く能力が亢進してCD8陽性T細胞をより活性化させることが明らかとなりました。このことから、RNAウイルス感染時やワクチン接種時には、MHCクラスI分子のドレス化を介した強い細胞性免疫応答が誘導される可能性が示唆されます。

社会への影響

 このMHCクラスI分子のドレス化を自在にコントロールする方法が開発できれば、それを正に調節することによって、がんやウイルス感染に対する防御機能を高めることに繋がり、逆に負に調節すれば、自己免疫疾患の発症抑制に繋がることが期待されます。

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