立命館大学は日英産学連携プログラムRENKEIの参加大学のひとつとして、同じく参加大学のリバプール大学との連携のもと、9月14日~23日に「RENKEI PAX School 2016 ~ Enslaving the Mind(意識の奴隷化)~」を開催しました。「RENKEI PAX School」は、「平和」というテーマに学際的に挑戦し、平和、人文科学、文化と科学に貢献する研究プロジェクトとして、専門分野の垣根を越えた日英の若手研究者の協働を通じて、平和構築のための知的基盤を築くことを目指しています。プログラムには立命館大学、京都大学、名古屋大学、立命館アジア太平洋大学、リバプール大学、そしてニューカッスル大学から計22名/15ヶ国・地域の大学院生が集まりました。

複数のアイデンティティ:「分人」という概念

平和公園での集合写真
平和公園での集合写真
平野啓一郎氏
平野啓一郎氏
長崎大学 鈴木教授のレクチャー
長崎大学 鈴木教授のレクチャー

 プログラムの第一パート:Lessons From the Past(過去からの学び)では、芥川賞受賞作家・平野啓一郎氏を招き、一般公開のパブリック・レクチャーを行いました。自身の著作タイトルでもある「What is “I”? ~Individual or “Dividual”(私とは何か-『個人』から『分人』へ)」をテーマに、すべての個人は「分人」という様々な顔(アイデンティティ)を持つことが自然であり、尊重されるべきだと提唱されました。「アイデンティティは一つであるべき」という考えと意識の奴隷化との関係について考えさせられる内容でした。

 また、参加者らはフィールドワークのために長崎市を訪れ、爆心地や原爆資料館を見学し、原爆の非人道性を目の当たりにしました。さらに長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)を訪問し、レクチャーと活発な質疑応答を行いました。その他にも、長崎市の田上富久市長との意見交換や、被爆者講話などを通じ、原爆の悲惨さと長崎が発信し続ける平和への願いを心にしっかりと刻みました。

未来をつくる

ラジャ・シェハデ氏
ラジャ・シェハデ氏
最終発表でのプレゼンテーション(The Game of Truthグループ)
最終発表でのプレゼンテーション(The Game of Truthグループ)

 第二パート:Theatres of Uncertainty Today(今日の不安定な戦域)では、まず中東和平問題を取り上げ、パレスチナ在住の作家・人権弁護士であるラジャ・シェハデ氏を招き、再びパブリック・レクチャーを行いました。レクチャーは「What Does Israel Fear From Palestine? (イスラエルはパレスチナの何を恐れているのか?)」と題し、パレスチナの現状や、パレスチナをめぐるイスラエルの方針や行動が双方の意識に及ぼす影響、問題解決に向け国際社会ができることなど、大変貴重なお話を聞くことが出来ました。続いて、国際平和ミュージアム館長で、スリランカ首相上級顧問でもあるモンテ・カセム教授によるレクチャーでは、2009年まで7万人以上の犠牲者を出す内戦を経験したスリランカから学べることや、インド洋の安全保障の重要性などに関するレクチャーが行われました。

 第三パートはShaping Our Shared Future (共有する未来の創造)と題し、最終日にプレゼンテーションが行われ、4グループが次のタイトルでパネル展示と実際にプレーできるオリジナルゲームの発表を行いました。(カッコ内は国際平和ミュージアムの関連資料とテーマ)①Fearless(ガスマスク/恐怖)、②Kazuo’s Bento Box(広島で被爆した生徒の弁当箱/原爆)、③The Game of Truth(墨塗り教科書/検閲)④Overcoming Fear(ガスマスク/恐怖)。パネル展示の内容は、国際平和ミュージアムの関連資料にまつわる当時の状況説明や、平和構築に向けての問題提起など、ゲームはプレーすることで発表のテーマを体感できるものなどで、従来のパネル展示にはないインタラクティブな方法により、展示資料にまつわる背景の理解を深め、当時の人々の心理を疑似体験できるような工夫が盛り込まれた、創造性に富んだユニークな発表ばかりでした。

 専門分野を超えた各国の若手研究者が平和と紛争、そしてその背景にある人々の意識に向き合い、活発な議論や調査の結果、訴求力のある最終成果物を創り出したことは、本プログラムが目指す平和構築のための知的基盤を築くための意義ある第一歩です。RENKEI PAX SCHOOLは、来年リバプール大学でさらに発展したプログラムが実施予定ですが、それに留まらず、今後も継続的な研究交流が活発に行われることを期待しています。

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